2020.05.27

【潤いのレシピ】 原川慎一郎(夕食編)
シンプルなおいしさ、具材の旨み染み渡るスープ

Photo / Norio Kidera
Text / Kei Sasaki
Edit / Shunpei Narita

「クリアで、美しい水は、ひとつの素材」と、料理における水の重要性を説く原川慎一郎さん。朝食編では「ニンジンとアボカドのサラダ シトラスドレッシング」、昼食編では「青大豆のフムス」を教えていただきました。夕食に推すのは一皿で肉も野菜もたっぷりとれる、「スパイスミートボールと季節野菜のスープ」です。材料と作り方は下部にまとめています。

「一皿で食事が完結する、ポトフのようなイメージ。手軽につくれるのに、季節野菜をいろいろ味わえて、ヘルシーで満足度が高い。ぜひご家庭の定番にして頂きたい一品です」

主役となるミートボールに使うのは、鹿児島県鹿屋市で家族で養豚・食肉加工業を営む『ふくどめ小牧場』の豚挽肉。清潔な肥育環境が目に浮かぶかのような、清らかな旨みが大きな特徴です。玉ねぎは高知県高知市『ファームベジコ』、ニンジンは千葉県山武市『くくりの森』、じゃがいもは北海道洞爺湖町『佐々木ファーム』から。すべて、[the Blind Donkey]の味づくりには欠かせない生産者陣が、手塩にかけて育てる野菜です。ミートボールのつなぎに使う卵だって、「おろそかにはできない」と、原川さん。千葉県木更津市に昨年完成したサステナブルファーム&パーク『クルックフィールズ』のものを使います。

パッケージには「CAGE FREE EGGS」の文字が堂々と。ストレスの少ない環境下で育った鶏の卵です

[the Blind Donkey]を東京・神田に開いたのには、理由があると原川さんは話します。

「一つには、幅広い層のゲストが集まる場所にしたかったから。[シェ・パニーズ]や僕が目黒でやっていた[BEARD]を知っているようなレストラン好きな方々だけでなく、近隣のオフィスに勤めるビジネスマンの方々にも。東京駅からも近く、地方から東京に来た生産者の方々もアクセスしやすい。開業から2年、そうした方々が混じり合い、一緒に食事を楽しむ空間が出来つつあるのは、とても嬉しいことです。もう一つは、老舗や職人の仕事など、長い時間が育むものの価値がしっかりと根付く町であるから。僕らがやっていきたいことと、歩調が合うように感じられました」

自然に寄り添い、環境に配慮した農業や漁業を続ける志の高い生産者と手を携え、東京から日本の食の形を変え、自然環境の未来に働きかけていく。単なるレストランではなく、そうした活動やコミュニティのハブとなる場として店を構えたといいます。レストランという存在も、外食という行為も「非日常」ではあるけれど、「暮らしとつながる場でありたい」と原川さん。

朝・昼・晩と3食のレシピ提案に伴い、原川さんに用意いただいた食材は、どれもこだわりの生産者さんのものです

「例えば食事をするゲストの方が“この料理おいしい”ではなく“このトマトおいしい”と言ったとします。その言葉をどう受け止めるかは、料理人の考え方によりますが、ジェロームや僕にとっては、何よりもうれしい。世の中には、こんなにおいしいトマトがある。なぜ、おいしいのか。それはこんな自然環境の中で、こんな人たちが、手間暇かけて育てているから。このトマトが、いつまでも食べられる世の中であって欲しいですよね、と。それこそが僕らが料理を通じて伝えたいメッセージなのですから」

レストラン内外での活動が実を結び、身近なところから少しずつ気運が高まりつつある手ごたえを感じていたといいます。

「コロナウイルスの時代を経験し、さまざまな価値観が変わりつつあります。人口が密集した都市部ほど感染の脅威に晒される一方、産地となる地方の農村部は大きな影響を免れている。人の移動が制限され、世界各地で、空気や海がきれいになったという報告もされています。海から、山から、大地から恵みを受け続けるために、どういうアクションが必要なのか。経済とのバランスを両立させるには? これまでの活動をさらに一歩進めて、自分たち自身がよく考え、食を通じて伝えていきたいとジェロームと話しているところです」

料理以上に、食材のおいしさが心に残る。[the Blind Donkey]のメッセージは、これまで以上に意味を持つ世の中になるかもしれません。

「スパイスミートボールと季節野菜のスープは、その喜びを知って頂くのに好適な料理です。一皿のスープの中で、豚肉、玉ねぎ、ニンジン、じゃがいもなど、それぞれの野菜の確かな味、しっかりとしたおいしさが主張し合いながら調和している。ボリューム以上の満足感があるはずです」

調理のポイントを尋ねると「ポイントというポイントさえない、本当にシンプルな料理です」と、原川さん。

スープの具材となる野菜たちは一口大にカットします

「それでもあえてポイントというならば、旬の野菜をきちんと選び、皮付きでもいいものは、皮もそのまま使うこと。土の香りというか力強いニュアンスまでもが、豊かな調味料になります。野菜に火を通し過ぎないことも重要。それぞれの野菜が持つ食感が生み出す味を大事にして下さい。まずは火の通りにくい根菜などから茹で始め、すぐに火が通る玉ねぎやアスパラガスは、ミートボールと一緒に後から加えると、同時によい加減に火が通ります」

最初は火の通りにくいじゃがいもとニンジンから。串を刺した時にスッとはいるくらいまで茹でます

加えて重要なのが、クリアで食材の味を引き立てる水を使うこと。

ミートボールを作る際のパン粉は、牛乳を使って戻すのではなく、水を使うのもポイントです

「食材さえきちんと選べば、ミートボールや野菜そのものが間違いなくおいしいのですが、実は、すべての食材の味が染み出たスープが主役。この味を決めるのがクリアな水なので、クリンスイの水が欠かせません。ミートボールに加えるパン粉を戻すのも、牛乳ではなく水で。そのほうが上質な豚肉の味が際立つからです」

水分を含ませたパン粉に卵をあわせます。卵黄の色が薄いレモン色なのは、餌の主原料にお米やおからなど、色の白いものを食べているからだそう
成形したミートボールを鍋にいれます。アスパラガスと玉ねぎもこのタイミングで

スパイシーなミートボールと、ほくほく、しゃきしゃきの野菜たち。レモンとディルが香るソースが、軽快なアクセントになり、蒸し暑さを増す季節に、体を浄化してくれるような味わいに仕上がります。

一煮立ちしたらお椀によそり、ディルとレモンのフレッシュな香りが食欲をそそるソースをかけて完成です

オーガニックな考え方を重要視して素材を選択している原川さん。朝・昼・晩のレシピ提案と共に、素材へこだわる原川さんは料理に使う「水」へのこだわりも話してくれました。「都市で生活をしていると、水道水のにおいがちょっとキツいなと感じる瞬間ってどうしてもある。クリンスイの浄水器はマイナス要素を取り除いてくれるのはもちろん、丸くてクリアな水という印象です。おいしいなと感じる食材を組み合わせて料理をするのが理想なので、ポジティブな掛け合わせのために必要な素材のひとつを、常にスタンバイしておけるのは心強いですよね」

材料  2人分

[ミートボール]

  • パン粉10g(大さじ2程度の水で湿らせておく)
  • 卵1個
  • 豚挽肉(粗挽き) 200g
  • 玉ねぎ 1/4 個
  • ニンニク 1/2片
  • シナモンパウダー 小さじ1/2
  • 黒こしょう 小さじ1
  • コリアンダーシード 小さじ1
  • カレー粉 小さじ1
  • パプリカパウダー 小さじ1

[スープ]

  • 玉ねぎ 大1個(約200g)
  • じゃがいも 大1個(約200g)
  • ニンジン 大1本(約200g)
  • グリーンアスパラ6本(約150g)
  • 塩 適量
  • 水 1500ml

[ソース]

  • ディル2枝
  • レモンの皮 1/2個分
  • オリーブオイル 大さじ2

作り方

  1. ミートボールをつくる。ボールにパン粉、卵、豚挽肉、玉ねぎ(粗みじん)、ニンニク(みじん切り)、スパイスを加えてよく混ぜ、好みのサイズに丸める。
  2. 鍋に水を入れて沸かし、塩を加え、皮つきのまま一口大に切ったじゃがいもとニンジンを茹でる。じゃがいもとニンジンに火が通ったら、1.のミートボール、一口大に切った玉ねぎとアスパラガスを加えて、すべてに火が通ったら、味をみて足りなければ塩を加えて味を調える。
  3. 小さなボールにみじん切りにしたディルとレモンの皮を削り、オリーブオイルを加えて混ぜる。
  4. 皿に2.のスープを盛り付け、3.のソースをかける。

今回原川さんが使用したのは、美味しい水のブランド『Cleansui』のガラス浄水器「クリンスイJP101-C」。日本のクラフトマンと作り上げた製品で、「ランドスケープ・プロダクツ」ファウンダーである中原慎一郎さんと、テーブルウェアを中心とした耐熱ガラス商品の製造と販売に携わる「手づくりガラス工房 クラフト・ユー」主宰の徳間保則さんが制作を担当。ハンドメイド独特のなめらかなシェイプが美しく、暮らしに寄り添うようなデザインです。
※数量限定品により完売いたしました

Cleansui Knows Japanese Craft

はらかわしんいちろう

渋谷[コンコンブル]で修業の後、渡仏。帰国後、三軒茶屋[uguisu]、九品仏[ラ・ビュット・ボワゼ]を経て、2012年に目黒に[BEARD(ビアード)]をオープンし、話題となる。 2017年、[シェ・パニーズ]元総料理長のジェローム・ワーグとともに、神田にレストラン[the Blind Donkey (ザ・ブラインド・ドンキー)]をオープンした。地産地消、オーガニックの流れを汲み、シンプルな調理法で素材の味を引き出す料理にファンが多い。

JOURNAL

クリンスイの読みもの

記事一覧