2020.05.30

【潤いのレシピ】原川慎一郎(朝食編)
素材引き立つフルーツサラダの作り方、教えます。

Photo / Norio Kidera
Text / Kei Sasaki
Edit / Shunpei Narita

料理界のトップランナーたちにシンプルレシピを教えてもらう連載【潤いのレシピ】。

有名シェフの素材への向き合い⽅を聞きながら、⽇々の⾷から暮らしに潤いを与えるようなレシピを朝・昼・晩と三⾷提案いただきます。今回は、神⽥のオーガニックレストラン[the Blind Donkey ]オーナーの原川慎⼀郎さんです。

「日本を100%オーガニックにする」を旗印に2017年、神田にオープンしたオーガニックレストラン[the Blind Donkey]。全国の生産者とネットワークを築き、サステナブルな方法で生み出される食材を紹介するオーナーの原川慎一郎さんは、レストラン業界で注目を集める料理人の一人です。朝はたっぷりのサラダでスタートしたいと話す原川さんが、今の季節にぜひ、と「ニンジンとアボカドのサラダ シトラスドレッシング」の作り方を教えてくれました。必要な材料と作り方は下部にまとめています。

「ニンジンのサラダというと、キャロットラペを思い浮かべる方も多いと思いますが、少し火を通して甘みを引き出し、旬の河内晩柑の自然な酸味や甘み、香りを染み込ませます。アボカドと河内晩柑の果肉を合わせることで、さっぱりとシンプルながら食感や香りにリズムがあり、食べ応えのある一皿になります」

ニンジンは千葉県山武市で植物性たい肥で野菜を育てる『くくりの森』から、河内晩柑は小規模農家の柑橘専門店『シトロン・エ・シトロン』から。どちらも[the Blind Donkey]の味づくりに欠かせないサプライヤーです。

元々はフレンチから料理の道に入った原川さん。東京のビストロの名店で修業した後にフランスに渡り、パリのレストランでも腕を磨きました。王道フレンチ一筋でキャリアを重ねてきた原川さんに転機が訪れたのは、2011年。フランスから帰国し、三軒茶屋のビストロ[uguisu]のシェフを務めていたときです。

「フードディレクターの野村友里さんが立ち上げた『オープンハーベスト』というプロジェクトに参加し、そこで現在のパートナーであるジェロームと出会ったのです。伝統や技術という文脈で料理を学んできた自分にとっては、“今、そこにある素材ありき”というジェロームの料理哲学に、価値観が一新される思いでした」

現在、[ブラインド・ドンキー]で料理長を務めるジェローム・ワーグシェフは、カリフォルニアのオーガニックレストランの先駆[シェ・パニーズ]で長きに渡り総料理長を務めた経歴の持ち主。地産地消やサステナブルな農業と流通、食育など、創業者、アリス・ウォータースの思想を厨房で体現してきた料理界のカリスマです。2012年、原川さんは独立し、目黒にビストロ[BEARD]をオープンします。修業時代から学んできたフランス料理の技術を活かしたビストロ料理と、ジェロームシェフに刺激を受けた素材ありきの料理を掛け合わせた新しい表現が話題を集め、店は瞬く間に繁盛店になりました。[BEARD]を開いてからも、ジェロームシェフとの親交は続きます。

「東京とカリフォルニアを行き来し、ジェロームの来日時には、全国の生産者を回り、さまざまなイベントで一緒に料理をするうちに、二人でレストランを基点とした新しい食のプロジェクトを立ち上げようという話になりました。[the Blind Donkey]は、神田にあるレストランが基点ですが、単なるレストランにはしたくない。サステナブルな方法で生産される食材を紹介し、生産者と食べ手をつなぐ場として、発展させていきたいと思っています」

技術ありきから、素材ありきへ。[BEARD]時代から原川さんの料理は、余分なものは極力そぎ落とし、生命力を感じる素材の味を「伝える」料理に変わっていきました。

「[the Blind Donkey]でお出しするのは、プロの料理人でなければできない料理ばかりではありません。だからレストランの料理といっても、とてもシンプルなものが多いんですよ」

今回教えてくれた「ニンジンとアボカドのサラダ シトラスドレッシング」も、[the Blind Donkey]のエッセンスが詰まった一皿。

旬の晩柑は味も香りも抜群。果肉だけでなく、果汁も皮も使うのできれいに切り分けておきます

「旬の河内晩柑を丸ごと、果肉も果汁も果皮も余すところなく使います。柑橘を合わせることで、えぐみがなく自然な甘みがある『くくりの森』のニンジンの味がより引き立つ。誰でも失敗せずに作れるシンプルレシピですが、ポイントは、ニンジンをやや硬めに茹でて食感を残すこと。熟したアボカド、果肉がしっかりとした河内晩柑との食感のコントラストもおいしさの秘密です」
ドレッシングにはタマネギ、ミント、河内晩柑の果汁を使い、爽やかな香味と小気味よい辛味、ジューシーな酸味のアクセントを利かせます。

シトラスドレッシングには、すりおろした晩柑の皮をいれるのもポイント

「ハーブや柑橘を合わせることで、塩の量を極力少なめにしながら、味に立体感を持たせることができる。おいしさはもちろん、日々の食事はヘルシーさも大事ですから」
ドレッシングに加え、味付けの肝となるのが、ニンジンの煮汁。

ニンジンは硬めに茹でる。煮汁もあとで使うので捨ててはいけません
ニンジンの煮汁(100ml)に蜂蜜とフェンネルシードを加え、とろみがつくまで煮詰めたものに、茹でたニンジンを和えます

「新鮮な野菜の煮汁は、最高のブイヨン。ニンジンの旨みと河内晩柑の香りが染み出た煮汁に、蜂蜜とフェンネルシードを加えて煮詰めたもので、ニンジンを和えておく。野菜を茹でるときに、きれいな水を使うのは絶対条件です」

原川さん曰く、「水は、素材」。「だしを取るときはもちろん、素材を茹でるとき、煮込むとき、水ひとつで味わいが変わります。おいしい素材の味を引き出すには、おいしい水が不可欠。自宅でもクリンスイの浄水器を使っているんですがシンプルな料理ほど、味に差が出ます」

素材の旨みをピュアに凝縮させた煮汁の甘みと、爽やかで軽快なドレッシングの風味が、食感の異なる3つの食材をおいしくつなぐ。ボウル一杯味わいたい、朝の主役になるサラダです。

材料  4人分

  • ニンジン 大1本(200g)
  • アボカド 1個
  • 河内晩柑(夏蜜柑でも可) 大1個(250g)
  • タマネギ 30g
  • ミントの葉 10枚
  • ディジョンマスタード 小さじ1/2
  • 塩 適量
  • 蜂蜜 小さじ2
  • フェンネルシード 小さじ1
  • オリーブオイル 大さじ2
  • 水 200ml

作り方

  1. 河内晩柑の皮をナイフなどで剥き、果肉から種を取り除いて手で一口大にほぐす。果肉を取り出した薄皮からできるだけ果汁を絞っておく。
  2. 小鍋に水200mlを入れお湯を沸かし、塩ひとつまみ、1.の河内晩柑の果汁半分と皮半分を加え、皮をむいて一口大に切ったニンジンを硬めに茹でる。
  3. ニンジンの煮汁(100ml)に蜂蜜、フェンネルシードを加え、とろみがつくまで煮詰め、茹でたニンジンを戻し、和えて冷ましておく。
  4. ボウルにみじん切りにした玉ねぎとミントの葉、塩ひとつまみとディジョンマスタード、残り半分の河内晩柑の果汁と皮(チーズおろしなどで削る)、オリーブオイルを入れ、混ぜてシトラスドレッシングを作る。
  5. アボカドを一口大に切り、1.の河内晩柑の果肉、3.のニンジンを塩とシトラスドレッシングと和え、皿に盛り付ける。

今回原川さんが使用したのは、美味しい水のブランド『Cleansui』のガラス浄水器「クリンスイJP101-C」。日本のクラフトマンと作り上げた製品で、「ランドスケープ・プロダクツ」ファウンダーである中原慎一郎さんと、テーブルウェアを中心とした耐熱ガラス商品の製造と販売に携わる「手づくりガラス工房 クラフト・ユー」主宰の徳間保則さんが制作を担当。ハンドメイド独特のなめらかなシェイプが美しく、暮らしに寄り添うようなデザインです。
※数量限定品により完売いたしました

Cleansui Knows Japanese Craft

はらかわしんいちろう

渋谷[コンコンブル]で修業の後、渡仏。帰国後、三軒茶屋[uguisu]、九品仏[ラ・ビュット・ボワゼ]を経て、2012年に目黒に[BEARD(ビアード)]をオープンし、話題となる。 2017年、[シェ・パニーズ]元総料理長のジェローム・ワーグとともに、神田にレストラン[the Blind Donkey (ザ・ブラインド・ドンキー)]をオープンした。地産地消、オーガニックの流れを汲み、シンプルな調理法で素材の味を引き出す料理にファンが多い。

JOURNAL

クリンスイの読みもの

記事一覧