2022.02.28

グラフィックデザイナー
佐藤卓さんと水との関係。 後編

photo/Norio Kidera
edit & text/Akio Mitomi

クリンスイとの出合いから赤いロゴ誕生へ。

2007年に「water」展を開催したグラフィックデザイナー・佐藤卓さん(前編)が、2009年にはクリンスイのCI(コーポレート・アイデンティティ)計画グランドデザインをプロデュース。現在の赤いマークなどでクリンスイのブランドイメージを統一した狙いを、改めてお聞きしました。

――インタビュー前編では、「water」展の企画を通じて「水で物事を見る視点」が生まれたということでしたが、クリンスイとの出合いのきっかけは?

「water」展ではいろいろな分野の方々とトークショーを開催しました。当時クリンスイのマーケティング部長だった方が、展覧会やトークショーをご覧になって、対談の企画を提案してくださったのです。喜んでお引き受けしたのですが、当時クリンスイのことを知らなかったので、まず発表会にうかがいました。そこで全容が分かると聞いていたのですが、デザインの仕事をしているので、「このままでいいんだろうか?」と思ったことを素直にお話しさせてもらったんです。

――どんな点が問題だと思われたのでしょうか。

CI(コーポレート・アイデンティティ)的にクリンスイの発表会を見たときに、全体がバラバラな印象だったんです。商品もそうですし、カラーリングもバラバラで。そのことを、いちデザイナーとして思っていることをぜんぶ話して、「もっと会社としてのアイデンティティを持たれるといいと思います」とお伝えました。その場では「佐藤さんはそういうお仕事もしているんですか?」と驚かれました(笑)

――その後、実際にクリンスイのCIを手がけることになりました。

実は当初の対談の話は事情によりなくなったのですが、改めてクリンスイから「展示会でお聞きしたことをもっと知りたい」と連絡があり、「多くの人がいろいろなところからクリンスイのことを見ているので、どこから見ても同じ会社のものだと分かるようにしなければならない」という趣旨のお話をしました。つまり、ブランディングについてです。ちょうど社名変更のタイミングでデザインもどうしようかと考えていたため、CIの依頼をいただくことになりました。

――今ではおなじみになった赤いマークの誕生です。

まずは企業の顔であるロゴマークをきちんとつくるべきだと思いました。それまではメインのロゴマークがカタカナの「クリンスイ」だったので、海外に進出するためにもアルファベットの「Cleansui」で真っ赤なロゴマークをつくりました。浄水器の会社はだいたい青や緑のロゴマークが多く、同じような色だと他社に紛れてしまいます。「ロゴマークの役割は水のシンボルとなることではなく、会社のシンボルとなることなんだ」ということが分かって、新しいアイデアで未来を切り拓く前向きな姿勢を、赤という色に込めました。もちろん、ほかの色についても検討しましたが「クリンスイの赤いロゴマークが画期的だ」と、選んでいただきました。

――実は、佐藤さんがデザインした浄水器もあったのですね?

私がデザインした蛇口直結型浄水器「クリンスイ CB013」には、あえて赤いロゴマークを付けました。ちょっとデザイン的な話をすると、クリンスイのロゴマークはシンボルマークとしても機能するようにデザインされています。文字をデザインしたロゴマークであると同時に、赤い長円形のシンボルマークにもなる。この形はクリンスイの浄水フィルターを意味していて、水道水がここを通過するときれいな水ができる、というストーリーができたのです。

――クリンスイのCIではグッドデザイン賞やドイツのRed Dot Awardを受賞されました。

まず、このロゴマークでクリンスイが水を扱っている企業であることを覚えてもらいたい。そのために赤という、いい意味で違和感のある色を付けているんです。それがきっかけになって、ブランドサイトなどでクリンスイの情報や水との取り組みを、ちゃんと知ってもらいたい。こうして、改めてロゴマークに込めた思いをお伝えできるのは、デザイナーとして嬉しいことです。

佐藤卓さんデザインの蛇口直結型「クリンスイ CB013」

さとうたく

グラフィックデザイナー。1981年東京藝術大学大学院形成デザイン科修了、電通勤務を経て1984年佐藤卓デザイン事務所(現TSDO)設立。「ニッカ ピュアモルト」の商品開発から「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」などのパッケージデザイン、「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」のグラフィックデザイン、「金沢21世紀美術館」「国立科学博物館」のシンボルマークデザインなどまで幅広く手掛ける。またNHK Eテレ「デザインあ」総合指導、21_21 DESIGN SIGHT館長、日本グラフィックデザイン協会会長を務める。展覧会に『デザインの解剖展』、著書に『塑する思考』など。
https://www.tsdo.jp

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