前編はこちら
食材を通して環境のことを考える、「FOOD & COMPANY」の取り組み。前編
生産者の顔が見える野菜や肉、魚、調味料などを取り揃えるグロサリーストア「FOOD & COMPANY」。小売りだけでなく、コロナ禍前には店舗で食やサステイナビリティをテーマにしたワークショップやイベントを定期的に開催しながら、地域の人々とのコミュニティづくりや学びの場を提供してきた。
2024.08.14
グローサリーストア「FOOD & COMPANY」1号店が東京・学芸大学に2014年オープンしてから、今年でちょうど10周年を迎えた。FOOD & COMPANYというと“食の会社”という意味に捉えられがちだけれど、カンパニーという言葉には別の意味合いがあると、谷田部さんは話してくれた。
「カンパニーは、“仲間”という意味で使っています。カンパニーの語源は、『カンパーニュを分け合う、ちぎりあう仲間』だそうで、それがすごく素敵だなと思って。また自分たちの人生の中で大事にしたいエッセンスだから、社名に使いました。食は、人を繋げる役割もあると思っています」
国産を中心にセレクトした食材や調味料。それらを選ぶ基準としてオープン当初から掲げているのが、「F.L.O.S.S.」という独自のガイドライン。「FRESH」「LOCAL」「ORGANIC」「SEASONAL」「SUSTAINABLE」の頭文字を組み合わせている。
「私たちは、有機認証などにはあまりこだわっていません。それよりも、生産者とのコミュニケーションを大事にするなかで、彼らが何を考えて、どういうことを表現したいかということを直接お聞きして、弊社の思いと合致している生産者とタッグを組みたいと思ってセレクトしています」と谷田部さん。
「最終的には、人で決めることが多いです。マーケティング的に作られたオーガニック認証がついた商品と、そうではないけれど思いを持ってこだわって作られた商品だったら、迷わず後者を選びます。それは生産者と会って話せばわかるので、『この方とお取引したい』と感じた『人』とご一緒したいと思っています」と、白さんも続ける。
オリジナルトートバッグには「Thanks for your company」の文字が。「カンパニーを“仲間”という意味で、お客さまにも生産者にも、『一緒に時間を過ごしてくれてありがとう』という気持ちを込めています」と谷田部さん。
トートバッグタイプのコンポストで、アトリエで出る野菜クズを肥料に。できた肥料は、農業をしている元スタッフやお取引のある農家さんで使ってもらうことで、循環が生まれている。
小さな輪からスタートして、現在は4店舗を展開。大手企業とのコラボレーションも行うなど輪はどんどんと大きく広がっている。スタッフも約40名にまで増えた。そんな中でも、当初の思いを濃度を薄めず広げていくためにも、スタッフとのコミュニケーションは欠かせないと話す白さん。
「最初は自分たちもお店に立って、スタッフと一緒に働いていたので、直接話すことで思いを共有するのが容易でしたが、今は店舗が増えてきて必ずしもみんなが同じ考えではないし、一致するとは思わないけれど、ベースの方向性は同じでありたいと思っています。そのためにもできるだけ直接話す機会を持つなど、コミュニケーションは大切にしています」
10年を経て変わらないこと、変わったこと、これからの「FOOD & COMPANY」について考えていることを尋ねた。
「『やさしい経済を通してリラックスした社会へ』は、私たちがすべての軸にしているビジョン。そのビジョンも思いも、スタートした頃から基本的に何も変わっていません。ただ、1店舗から今は4店舗になり、取引先も増えて社会でもある程度認知されるようになったことで、やれることは増えたと思います。これまでは、自分たちのビジネスの起点を作る10年。今はお取引先も増えて小売りの可能性を感じた一方で、限界もあるなと感じています。だから、次の10年ではビジョンでもある『やさしい経済』を広げていくためにも、まちづくりやものづくりの分野にもっと関わっていきたい。今後はさまざまな規模のビジネスが持つ強みを活かして、業界の垣根を越え方向性を共にできるパートナーたちを繋ぎ、新しい可能性を生み出していきたいと思っています」とまっすぐな目で、白さんは語ってくれた。
今後は東京・学芸大学で、水餃子専門店もオープン予定だそう。「母が作る水餃子が絶品なんです。それを味わってもらいながら、気軽にお酒と一緒に楽しめるお店です」と白さん。ヘルシーなファストフードになる冷凍餃子は規格外の食材を活用しやすく、フードロス削減にも貢献できるという。また新たなパートナーとのコラボレーションが可能になる間口の広さも魅力で、食に交わると書く「餃」という漢字が表すように、人と人が交わるきっかけを生み出したいとも。これからの活動がますます楽しみだ。
最新情報はクリンスイ水の編集部Instagramアカウントで @cleansui_knows
「オーガニックがあたりまえにある暮らし」を目指して、オーガニック食材や調味料などを販売するグローサリーストア。2014年、東京・学芸大学に1店舗目をオープン。現在は新宿、代官山、神奈川・湘南を加えて4店舗展開している。
https://foodandcompany.co.jp