ミネラルウォーターを購入すると、原材料名に「鉱水」と表示されているのを見かけることがありますが、そもそも鉱水とはどのような水なのでしょうか。
本記事では鉱水とは何か、定義や特徴を紹介します。鉱水と鉱泉水、硬水との違いなど鉱水のよくある勘違いを解消しながら、妊婦さんや赤ちゃんも含めた安全性と健康への影響についても解説します。
鉱水とはどんな意味?
ひとくくりに水といっても、たくさん種類があるのはご存じでしょうか。ミネラルウォーターと呼ばれる水は基本的にポンプなどから取水した地下水や湧き水であり、処理される前の自然なままの状態を原水といいます。原水は採取場所や水質によって7種類に分けられています。※1
- 浅井戸水
- 深井戸水
- 湧水
- 鉱泉水
- 温泉水
- 伏流水
- 鉱水
原水の一つに鉱水があり、鉱水は土壌や岩石などの鉱物から溶け出したミネラルが含まれた水です。ミネラル成分が地下の水脈にどれくらい滞留しろ過されてるか、どのような成分が含まれているかなど採取された土地によっても異なります。
品名としては、鉱水のまま使用されていれば「ナチュラルミネラルウォーター」、鉱水のミネラルを調整したり、ほかの水源の水を混合したりしている場合は「ミネラルウォーター」と表記されます。
鉱水は体に悪いって本当?
鉱水はミネラル分が含まれているため健康に良い飲料としても親しまれていますが、一方で鉱水に対する疑念を持つ声もあります。
weblio辞書によると、鉱水には次の2種類の意味があると表記されています。
- 多量の鉱物質が含まれている水
- 鉱山の坑内や製鉱所などから排出された鉱毒を含む水
確かに鉱毒を含む鉱水は注意が必要ですが、一般的に飲料水として使用されている水は前者の鉱物質が含まれている水のことであり、食品衛生法で管理され安全性も保証されています。※2
鉱水と鉱泉水の違いって?
原水の中で鉱水とよく似た言葉に「鉱泉水」というのもあります。鉱泉水もミネラル成分を含むため鉱水の一種といえますが、鉱水は地下水をポンプなどで汲み上げるのに対し、鉱泉水は地下から自然に湧き出た水、かつ水温が25度未満のものです。この条件を満たしていない場合は、別の原水に分類されます。
鉱水は硬水や軟水とは違うの?
鉱水と硬水や軟水の違いも理解しておきましょう。鉱水というのはミネラルを多く含む地下水、それに対し硬水や軟水というのは水の硬度を表す言葉です。
水の硬度とは、水の中にカルシウムやマグネシウムといったミネラル成分がどのくらい溶け込んでいるかを表す指標で、ミネラルが多いと硬水、少ないと軟水となります。つまり鉱水は、ミネラルの量によって硬水にも軟水にもなるのです。
厚生労働省によると、これらの量は炭酸カルシウムの量として換算されます。炭酸カルシウムの含有量が60mg/L以下の水は軟水、60~120mg/Lは中硬水、120〜180mg/Lは硬水、180mg/L以上は超硬水と4つに分類されています。※3
詳細についてはこちらを参考にしてください。
鉱水は安全なの?
飲み物として一般に販売されている鉱水は、食品衛生法に基づき安全に飲めるよう徹底して品質管理されています。ミネラルウォーターは殺菌・除菌の有無など製造基準によって成分規格が異なり、水質を分析するためにさまざまな項目が設けられています。※4
- カドミウム及びカドミウム化合物 0.003mg/L以下
- 鉛及び鉛の化合物 0.05mg/L以下
- 水銀及び水銀の化合物 0.0005mg/L以下
- フッ素及びフッ素の化合物 2mg/L以下
- ホウ素及びホウ素の化合物 5mg/L以下
上記は成分規格の一部ですが、このように適合値が細かく決められており、それらの基準をクリアしなければなりません。
ちなみに水道水は「水道法」があり、食品衛生法よりもさらに厳しく(項目数が多く)管理されています。たとえば以下のような項目は、水道法では規定がありますが、食品衛生法では規定がありません。※4
- 亜鉛及び亜鉛の化合物
- アルミニウム及びアルミニウムの化合物
- 鉄及び鉄の化合物
- ナトリウム及びナトリウムの化合物
- 塩化物イオン
鉱水を飲むと健康への影響はある?
鉱水はミネラルが含まれており健康に良い飲み水ですが、ミネラルは不足しても摂り過ぎても健康に影響を与えるため注意が必要です。
カルシウムは骨や歯を形成する重要な栄養素であり、骨強度が高まれば骨折や骨粗鬆症、フレイル予防に良いとされています。※5 一方で、過剰に摂取すると血中のカルシウム濃度が高くなり血管や軟部組織の石灰化や腎障害のリスクが考えられるでしょう。※6
マグネシウムは、カルシウムと同じように歯や骨の形成をサポートするほか、便秘改善や髪の老化予防など美容面での働きも期待できます。マグネシウムは過剰摂取しても尿として排出されるため特に問題はないのですが、腎臓に疾患があると高血圧になる可能性があるので注意が必要です。※7,8,9
鉱水が健康に与える影響は硬水か軟水か、どのくらいの量を摂取するかでも変わってきます。カルシウムとマグネシウムの働き、過剰症、欠乏症についての詳細は以下の記事を参考にしてください。
ライフステージの違いで鉱水の影響は変わる?
鉱水は体に良いことが分かりましたが、赤ちゃんや妊婦さんなどデリケートな時期にも飲めるのでしょうか。ライフステージの違いによる健康への影響を考えてみましょう。
赤ちゃんへの影響
鉱水は衛生面でも健康面でも安全な飲み水ですが、赤ちゃんに使用する場合はカルシウムとマグネシウムの影響を受ける可能性があるので注意が必要です。
【カルシウム】
骨を形成するカルシウムは、乳児・幼児の成長には欠かせません。※6 乳児のカルシウムの目安量は、0〜5か月が1日当たり200mg、6〜11か月が250mgです。※10
離乳食が始まる5か月頃までは母乳またはミルクのみを摂取するためカルシウムが不足することはありませんが、近年はカルシウムの吸収をサポートするビタミンDの不足が課題となっています。
日本でも、母乳栄養児のビタミンD欠乏によるくる病や低カルシウム血症の発生が報告されており、カルシウムの摂取と合わせて日光照射の必要性も提起されています。※10
【マグネシウム】
マグネシウムは骨の形成だけでなく、たんぱく質合成や神経機能、血圧のコントロールなどにも役立つ栄養素で0〜5か月の摂取目安量は1日当たり20mg、6〜11か月は60mgです。※10,11
マグネシウムが欠乏すると将来的に骨粗鬆症や心血管系疾患などのリスクがありますが、反対に過剰摂取すると腎臓に負担をかける可能性があり、マグネシウム中毒などを引き起こすリスクもあります。※11
赤ちゃんのうちは母乳やミルクで十分ミネラルを摂取できるので過敏になる必要はありませんが、調乳する場合は軟水を使用しましょう。※12,
妊婦さんへの影響
鉱水は妊婦さんにとっても安全な飲み水で、カルシウムやマグネシウムを積極的に取り入れたい成分ですが、摂りすぎ・不足にならないよう適切な量を守りましょう。
【カルシウム】
カルシウムの補充は、妊娠高血圧腎症のリスクを低減するという研究発表が報告されており、世界保健機関(WHO)でも妊婦さんへのカルシウム摂取を呼びかけています。
妊娠高血圧腎症とは、妊娠20週以降に高血圧やたんぱく尿を伴い、母胎と胎児の健康に重大な影響を与える疾患です。※6
妊婦さんへ推奨するカルシウムの摂取量は、付加量はなく一般の成人と変わりません。※13 ただ同時にカルシウムの吸収を助けるビタミンDが不足している現状が報告されており、特に母乳栄養児への欠乏が課題となっています。※10 カルシウムとビタミンDをセットで考え適切な量を摂取しましょう。
【マグネシウム】
妊婦さんのマグネシウム付加量は、1日の推奨量で40mgです。※14 腎臓や消化器系に疾患がない限り妊婦さんにもマグネシウムを積極的に摂取することが推奨されていますが、多過ぎると下痢、マグネシウム中毒などによる赤ちゃんへの影響などが懸念されます。
反対に欠乏すると骨粗鬆症や高血圧症、心血管系疾患などのリスクもあります。※7 量に関して過剰に気をつける必要はありませんが、水だけでなくバランスの良い食生活を心がけましょう。
鉱水と水道水はどっちがいいの?
次に鉱水と水道水の違いについて、安全性・美味しさ・健康・環境の観点からみていきましょう。
安全性の面
鉱水はミネラルウォーターとして販売するための基準となる食品衛生法、水道水は飲み水としての安全を確保するための基準となる水道法によって検査項目が設けられています。
どちらも安全に飲めますが、水道法は広く国民の健康を守るために一定の基準が設けられているため、ミネラルウォーターよりも検査項目数が多く設けられています。
美味しさの面
鉱水・水道水どちらとも味わいや臭気などを考慮して検査が行われて飲みやすくなっていますが、水道水はカルキ臭などが気になる場合もあります。クリンスイの浄水器を利用すれば、蛇口から出てくる残留塩素、排水設備や河川から出る一般細菌や不純物なども除去できるため臭いも気にならず美味しさもアップします。水道水に含まれるミネラルは残したままなのも嬉しいところです。詳しくは以下で確認してください。
また、硬水か軟水かで飲み物や料理の風味・味わいにも違いが出てきます。味わいの違いはミネラル成分によるものですが、どちらが良いかは個人の嗜好や素材によって異なり一概にはいえません。お茶やコーヒーでまろやかな味わいと口当たりが好みの場合は軟水、スッキリした味わいや渋みを好む場合は硬水が良いとされています。
硬水・軟水の特徴、飲み物や料理の味の違いなどについて詳しく知りたい方は、こちらも参考にしてください。
健康の面
健康面では、鉱水でも水道水でも硬度が影響します。全国の水道水の硬度平均は48.9mg/Lで、軟水という研究結果も出ています。※15
しかし実際には原水の水質に由来し、地域によって原水の硬度はさまざまです。東京大学の研究結果によると硬度は関東地方が高め、北海道や東北は低めの傾向にあると報告されています。※15
硬度が高いほどミネラルの含有量は多くなりますが、水道水にもミネラルは含まれています。健康のためには水の硬度にこだわり過ぎず、慣れ親しんだ味わいや飲みやすさなど自分に合う水を選ぶことが大切です。
軟水・硬水の違いや水選びのソリューションについて知りたい方はこちらを参考にしてください。
環境の面
鉱水はミネラルウォーターとしてペットボトルで販売されているのが一般的です。そのため環境面では水道水にマイボトルを使用すれば環境負荷の低減につながります。具体的には、蛇口直結型浄水器のフィルター1個を使うだけで、ペットボトル1800本分もごみの削減が可能です。さらに環境影響評価の一つであるLCAで換算すると、ペットボトルと比較して約9割もの温室効果ガス削減(※)につながります。(※東京都市大学伊坪研究室との共同研究成果より)
また環境省の調べによると、ペットボトルやマイボトルの資源採取から製造、廃棄に至るまでの間に排出されるCO2の量は、100回中1回の使用でペットボトルは119gであるのに対し、マイボトルであるステンレス製は13.90g、アルミ製は10.68gでした。※16
地球温暖化だけでなく、環境問題の一つとしてあげられるのが水質汚染問題です。健全な水質源の保全・活用に向け水の使用量や廃棄の削減、水資源の活用といった多様な取り組みが日本政府や自治体、企業、個人レベルで行われています。クリンスイでも、独自の技術を活かした水道水の活用や啓発の活動を行っています。
鉱水とは原水の種類をいい、硬水とは異なる!
鉱水は原水の種類であり、私たちの体に存在する必要不可欠なミネラル成分を含む水であるため健康にも良い飲料といえるでしょう。ミネラルウォーターを飲むのも良いですが、鉱水はミネラルの量によるため地域によっては水道水のほうが多くミネラルが含まれている場所もあります。
また水道水は食品衛生法よりもさらに厳しい「水道法」によって安全性が保たれているほか、CO2や廃棄物が少ないといった点もメリットとしてあげられるでしょう。
クリンスイは、水道水を美味しく安全に飲める浄水器を取り扱っています。手軽に取り入れられるポット型、飲み物にも料理にも簡単に使える蛇口直結型、キッチンに浄水機能を内臓するビルトイン型など、ライフスタイルに合わせたラインナップを揃えているのでぜひチェックしてみてください。
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【参考文献】 すべての参照年月日2024年5月31日
※1 農林水産省局長通達|ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)の品質表示ガイドライン
※2 weblio辞書|鉱水
※3 厚生労働省|食品安全委員会|清涼飲料水評価書 カルシウム・マグネシウム等(硬度)
※4 東京都水道局|水源・水質
※9 厚生労働省|ヘルスケアラボ|「最近、抜け毛が多くて気になります」
※10 厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020年版)|乳児・小児
※13 厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020年版)|ミネラル
みずはかせ
1997年より三菱ケミカル愛知研究所でクリンスイ製品の開発・評価・研究開発に携わる。フォークリフト運転免許と華道正教授の免許を持つ。