2024.05.15

「クリンスイ仕込 獺祭」の旭酒造で、
人の手による酒造りを見学。

photo / Norio Kidera
text / Hitomi Takano
edit / Akio Mitomi

クリアな日本酒を生み出す。人の手とデータ技術。

クリンスイ40周年記念「クリンスイ仕込 獺祭(だっさい) 純米大吟醸 磨き三割九分」の蔵元である「旭酒造」の本社蔵で、製造工程を取材した。人の経験や勘だけでは踏み込めないところまで突き詰めるために、さまざまなデータを記録・分析し、手作業や手間、データと最新の技術などすべてを取り入れてきた旭酒造。酵母や微生物など生き物を扱うゆえ、すべてを数値化することが難しい酒造りにおいて、アナログながらデータや数値でも追いかけていくことで旭酒造が求める酒を造り、さらによりよい酒を追い求め続けている。

精米で50%以上磨かれた酒造好適米の山田錦は、冷水で糠(ぬか)を洗米後、厳密な分量の水を吸水させる。
強い蒸気で外硬内軟な状態に蒸し上げた蒸米(むしまい)。

獺祭には全国各地の酒造好適米「山田錦」を使用している。農作物はその年の気候や地域などによって水分量や状態が違うため、入荷した米はすべて水分量などを分析。その上で、洗米や吸水の作業は人の感覚と数値を混ぜ合わせる。少量ずつの米を袋に詰め、漬ける時間を毎回細かく調整しながら、0.1%単位で水分量を調整していくのだそう。

酒米は1時間かけて蒸して蒸米に。ここでも水分量が鍵になる。分析データを確認しながら水分調整を繰り返し、外側は硬く内側は柔らかい「外硬内軟(がいこうないなん)」の状態に蒸し上げていく。

日本で一番広いといわれる麹室は2室で48台。室内の温度と湿度は一定に保たれ、どの場所でも米の温度に変化がないよう、環境を整えている。
もやし(酒造用麹)を米に植え付ける製麹(せいきく)。麹(こうじ)は米を溶かし糖に変え、酒の味に深みを与える。

入室するとモワッとした熱気と湿度を感じる、麹室(こうじむろ)。ここでは毎日手作業で製麹(せいきく)を行っている。約5時間、ひたすら蒸米をひっくり返してはひと粒ひと粒ほぐし、毎日変わる米の蒸し上がり状態や水分量を手で感じとりながら、蒸米を均一にほぐしていくと、麹が均一に米に付く。機械化できない工程ではないけれど、どうしても米が崩れたり、麹菌が均一にならなかったり……。どんなに便利でも、やはり人の手にはかなわないのだという。

本社蔵の7〜9階が発酵室に。醸造タンクがずらりと並ぶ。
蒸米、麹、水を3回に分けて仕込み、室温5℃の発酵部屋で30日程度、品質を管理する。

仕込みから発酵の工程を行う発酵室。ここに並ぶ醸造タンクは通常よりもかなり小ぶりなもの。大きな蔵では10kℓ前後のものを使うことが多いけれど、ここでは3kℓや5kℓのものを使用している。小さいタンクを使うのは、細かい温度変化もコントロールしやすく、人の目で管理しやすい範囲で酒造りと向き合いたいという思いから。

よりきれいな酒を造るための上槽(じょうそう)工程では圧搾機や遠心分離機を使用して、日本酒と酒粕に分けられる。

そして、いよいよ搾りの工程。ここでの作業で大事にしているのは機械や配管の洗浄。毎日、数時間をかけて洗う。どんなにいい酒ができあがっても、わずかな汚れや臭いで台無しになる。日々の徹底した洗浄の積み重ねが、良質な日本酒の香りや味わいにつながる。

日時、温度、アルコール度数、アミノ酸の量など、すベてのデータを毎日記録・分析。毎朝官能試験も行っている。
瓶詰め後に風味を逃さないよう加熱処理を行って出荷される。

旭酒造は、日本で一番人が多い酒蔵。データ分析と同じくらい、人の力を大切にしているのも特徴だ。要になる味のバランスや香りは、会長、社長、製造部長、責任者が毎朝集まって官能試験を行い、最終的に人の味覚や嗅覚で判断。AIの技術が進んだとしても、人が中心になるということは変わらない。やはり最後の微調整は人の感覚を信頼しているという。 今や世界で知られる獺祭の日本酒。品質と数量を同時に追求するために人の手をかけることをないがしろにせず酒造りと真摯に向き合う姿勢、蔵で出会った職人たちのまっすぐなまなざしが、クリアな獺祭の味と重なった。


最新情報はクリンスイ水の編集部Instagramアカウントで @cleansui_knows

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