2024.03.29

硬水に含まれる栄養素の健康・美容効果とは?
ダイエットや美容にいいの?

「硬水を飲むことは美容や健康に良い」という話を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。一方で、なぜ硬水が体に良いとされているのかまでは知らない方も多いでしょう。

水には硬水と軟水があり、それぞれ異なる特徴を持っています。そこで今回は硬水と軟水の違いや硬水に含まれる栄養素、摂取量の目安を紹介します。硬水を飲むメリットを知って、効果的に生活に取り入れましょう。


硬水と軟水の違い

硬水と軟水の違いは、水の中に含まれるミネラルの量です。水1リットルにおける主なミネラル分であるマグネシウムとカルシウムの含有量を炭酸カルシウム量に換算したものを「硬度」といい、世界保健機関(WHO)では一般的に60mg未満が「軟水」、120〜180mg未満が「硬水」とされています。※1

硬度は地域差があり市販のミネラルウォーターは採水地により、硬水だったり軟水だったりします。普段飲んでいる水の硬度を知りたい場合は、水道局のホームページやペットボトルのラベルを確認してみましょう。

下記リンクでは、硬水と軟水の違いをより詳しく解説しています。気になる方はぜひチェックしてみましょう。

世界の硬度の違い

一般的に硬度は、地下水のほうが表流水などに比べて高くなる傾向があり、国の地形によって差があります。たとえば、アメリカ南部~メキシコ北部を流れるコロラド川の水の硬度は500mg/Lを超えますが、日本の信濃川や利根川は50mg/L未満です。

地中での滞留時間や河川の長さが短い日本などに比べ、欧米のように長い時間かけて石灰質の地域を通ってくる欧米などの水の硬度は高くなりやすいのです。※2

日本の硬度の違い

日本の水道水の平均硬度は約50~60mg/L程度とされていますが、日本国内でも地域による差はあります。

たとえば、東京大学大学院総合文化研究科・教養学部が行った調査結果では、都道府県別の水道水の平均硬度は関東地方で高く、北海道・東北地方で低い傾向が見られました。※3 また東京都水道局の試験結果では、東京都内でも測定地域により差があることが示されています。※2

どの地域の原水に由来するかによって、国内でも水道水の硬度に差が生じるのです。詳しくは以下の記事も参考にしてください。


硬水に含まれる栄養素とは

硬水には、硬度の指標となるカルシウムやマグネシウムが含まれています。

カルシウム

カルシウムは人体に最も多く存在するミネラルであり、成人の体内には約1kg含まれています。※4 カルシウムの主な働きは骨や歯をつくることです。体内に含まれるカルシウムの約99%はリン酸カルシウムとして骨および歯のエナメル質に存在し、骨や歯の構造や機能を支えています。※4,5

そして残りのカルシウムは、カルシウムイオンとして血液や筋肉、神経内に存在し、血管の収縮と拡張、神経伝達、ホルモン分泌などの役割を担います。血清中のカルシウム濃度は厳格に制御され、摂取量によって変動することはありません。骨組織にカルシウムを貯蔵したり取り出したりすることで、血液や筋肉、細胞内液のカルシウム濃度を一定に保っています。※5

マグネシウム

マグネシウムは、人体に必要なミネラルの一種です。成人の体内には約20~30g含まれており、そのうち約60%は歯や骨に、残りのほとんどは筋肉や脳、神経に存在します。リンやカルシウムとともに骨を形成するほか、300種類以上の酵素を活性化し、たんぱく質を合成したり筋肉の収縮や体温・血圧を調節したりする働きを持っています。※6

また、体内に存在するマグネシウムの1%未満は血清に含まれており、腎臓の働きにより厳密にコントロールされています。1日に約120mgのマグネシウムが尿として排出され、不足したり過剰に摂取したりすると体の不調につながることがあります。※7


健康・美容への効果

硬水に含まれる栄養素には、健康や美容に対してどのような影響があるのかみていきましょう。

カルシウム

カルシウムは、骨や歯をつくるほか、健康と要介護の中間の状態であるフレイル予防にもつながると考えられています。

骨や歯をつくる

人体にあるカルシウムのほとんどは、骨や歯のエナメル質に存在し、新しい骨を作ったり骨つ強さを保ったりする働きを持っています。※4 そのため、水や食べ物を通してカルシウムを十分に摂取することで、骨の健康の維持につながります。

たとえば、カルシウムの摂取は骨強度が低下して骨折しやすい状態になる「骨粗鬆症」の予防に効果的とされています。人は年齢を重ねたり閉経を迎えたりすると、骨量が減少して骨粗鬆症を発症しやすくなります。慢性的なカルシウム不足は骨粗鬆症の危険因子とされており、骨粗鬆症を防ぐには十分なカルシウムの摂取が欠かせません。※8

カルシウムを摂取して骨量減少を最小限に留めることで、骨折しにくい強い体の維持につながります。

フレイル予防にも関わる

フレイルとは、健康な状態と介護を必要とする状態の中間段階を示す言葉です。加齢に伴って身体的フレイル、精神・心理的フレイル、社会的フレイルの3つが連鎖することで、徐々に自立した生活が難しくなります。フレイルには「可逆性」という特性があり、進行を緩やかにしたり健康な状態を取り戻したりするには、予防に取り組むことが重要とされています。※9

そんなフレイルは、骨の健康に寄与するカルシウムを摂取することが予防に関係するといわれています。※10 身体的な衰えの予防はもちろん、体を動かすことで食欲や心の健康にも影響し、さまざまな面からフレイル予防につながっていくでしょう。※11

マグネシウム

マグネシウムには骨粗鬆症予防や便通改善、ダイエットなどの効果が期待されています。

骨や歯をつくる

体内に含まれるマグネシウムのうち、約6割は骨や歯に存在しており、骨造りに関連する骨芽細胞や骨を溶かすときに関連する破骨細胞の活性に関係しています。※6,7 またマグネシウムは、カルシウムの吸収を助けるビタミンD濃度にも影響を与えるとされています。※7

過去の研究論文では、マグネシウム摂取と骨密度との間に関連性があることや、骨粗鬆症の女性はそうでない女性と比べて血清マグネシウム値が低いことが明らかになりました。※7 つまりマグネシウムが不足すると、骨粗鬆症のリスクが高まるということです。

そのため骨粗鬆症の予防には、カルシウムだけでなくマグネシウムも十分に摂取することが望ましいといえます。

便通改善

マグネシウムは、酸化マグネシウムとして一部の便秘薬に配合されています。※7 腸の中に水分を引き寄せて、便を柔らかくしたり腸の運動を助けたりすることで排便を促す働きがあり、1950年から便秘薬として広く使用されてきました。そのため、マグネシウムを多く含む水を摂取することで便秘改善につながると考えられるでしょう。※12

ただし血中のマグネシウム濃度が異常に高くなり、不整脈や呼吸抑制、意識障害を引き起こす「高マグネシウム血症」になるリスクもあるため、摂取量には注意が必要です。健康な方であれば食べ物からマグネシウムを過剰に摂取しても余剰分は体外に排泄されるため、健康上のリスクはないとされていますが、サプリメントや医薬品を長期使用する場合は十分注意しましょう。※7

ダイエット

マグネシウムには便秘を改善する効果があるため、便秘薬として利用されています。ぽっこりお腹の方など便秘が原因の場合は、マグネシウムにより排泄された分体がすっきりするでしょう。

ただし、前述したようにマグネシウムを配合した便秘薬には副作用もあります。あくまで便秘の症状を改善するための医薬品であるため、便秘ではない方がダイエット目的で使用するのはやめましょう。

髪の毛のケア

ミネラルの1つであるマグネシウムは、髪の毛にも良い影響を及ぼします。髪の毛は、パーマやカラーリングに加え、加齢やホルモンのバランスの乱れによっても質が変化していきます。年齢とともに脱毛などの症状が現れることも少なくありません。

そんな髪の毛の老化予防には、食生活の改善やヘアケア、ストレスを減らすことなどが重要です。栄養については、たんぱく質やビタミン、ミネラルの摂取が効果的だといわれています。※13マグネシウムはミネラルの1つであるため、髪の毛の老化が気になる方は普段から積極的に摂取すると良いでしょう。


過剰症・欠乏症にも注意が必要

私たちの体において大切な役割を担うカルシウムやマグネシウムは、不足・過剰状態にならないよう注意が必要です。

カルシウム

カルシウムは骨や歯をつくる働きを持つため、不足状態が続くと骨量が低下し、骨粗鬆症につながる可能性があります。※4 すぐに顕著な症状が現れることはないものの、長期的な健康を見据えて普段から積極的に摂取しましょう。

ただし、カルシウム摂取量は多ければ多いほど良いというわけではありません。血中のカルシウム濃度が大きく上昇すると、鉄・亜鉛の吸収障害や高カルシウム尿症などが生じるリスクがあります。※10 また、便秘の原因にもなりかねません。通常の食事でカルシウムを過剰に摂取してしまうケースは稀ですが、サプリメントなどを使用する場合は飲み方に注意が必要です。

マグネシウム

マグネシウムが不足すると骨の形成に影響が出るほか、場合によって心血管疾患や片頭痛の原因となる可能性があります。※7 健康な方であればすぐに症状が現れることは稀ですが、消化器疾患を有する方やアルコール依存症の方、高齢者などはマグネシウム欠乏のリスクが高いため注意しましょう。

過剰症については、健康な状態であれば食べ物からマグネシウムを多く摂取しても尿として排出されるため大きな問題はありません。※7 しかし、腎臓に疾患があると血液中のマグネシウム濃度が高くなることがあります。※6 

また、サプリメントや薬などで多量のマグネシウムを摂取すると下痢や腹痛を引き起こすことがあるため、長期的に使う場合は飲み方に注意が必要です。※10


どれくらい摂取すれば良いのか

健康に良いとされているカルシウムやマグネシウムの推奨摂取量を紹介します。

カルシウム

厚生労働省が提示するカルシウムの推定平均必要量(不足のリスクが50%とされる目安)、推奨量(目指したい量)、耐容上限量(これ以上摂取すると健康被害が及ぶ可能性がある目安)を以下に示します。

【カルシウムの食事摂取基準(mg/日)】 男性

推定平均必要量推奨量耐容上限量
15~17歳650800
18~29歳6508002,500
30~49歳6007502,500
50~64歳6007502,500
65~74歳6007502,500
75歳~6007002,500

参考:厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020 年版)

【カルシウムの食事摂取基準(mg/日)】 女性

推定平均
必要量
推奨量耐容上限量
15~17歳550650
18~29歳5506502,500
30~49歳5506502,500
50~64歳5506502,500
65~74歳5506502,500
75歳~5006002,500

参考:厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020 年版)

マグネシウム

マグネシウムの推定平均必要量と推奨量、耐容上限量は以下の通りです。

【マグネシウムの食事摂取基準(mg/日)】 男性

推定平均必要量推奨量耐容上限量
15~17歳300360
18~29歳280340
30~49歳310370
50~64歳310370
65~74歳290350
75歳~270320

参考:厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020 年版)

【マグネシウムの食事摂取基準(mg/日)】 女性

推定平均必要量推奨量耐容上限量
15~17歳260310
18~29歳230270
30~49歳240290
50~64歳240290
65~74歳
230
280
75歳~220260

参考:厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020 年版)

通常の食品から摂取するマグネシウムに関しては、耐容上限量は決められていません。サプリメントなどから摂取する場合は、成人で350mg/日、小児で 5mg/kg(体重) /日 となっています。


硬水・軟水の選び方

「ミネラルを摂取するならミネラルウォーターの方が良いのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし「教えて水博士! #7私たちの身近にはどんな飲み水があるの?」で解説しているように、カルシウムやマグネシウムをはじめとしたミネラルは水道水にも豊富に含まれています。そのため、ミネラルを摂取したいのであればぜひ水道水を積極的に活用しましょう。

水道水をそのまま飲むことに抵抗がある方は、浄水器の使用がおすすめです。浄水器はミネラルをそのまま残しつつカルキ臭やカビ臭などを除去してくれるので、よりおいしくミネラルを摂取できます。

なお、ミネラルウォーターを購入する場合は栄養成分表示を確認しましょう。製品によって硬度が異なるため、過剰症にならないよう必要なカルシウムとマグネシウムの量を考慮して、自分に合った硬度の水を選んでくださいね。

硬水と軟水の違いの詳細については、下記記事でチェックしましょう。


硬水からミネラルを効果的に摂取しよう!

前述のように硬水には、カルシウムやマグネシウムといったミネラルが含まれています。ミネラルといえばミネラルウォーターをイメージする方も多いですが、地域によっては水道水にも負けず劣らず含まれています。効果的にミネラルを摂取したいのであれば、経済的で環境への負荷が小さい水道水を積極的に活用しましょう。

硬水の特徴について詳しく知りたい方は、こちらを読んでみてください。

水道水とミネラルウォーターの違いについては、こちらで詳しく解説しています。

また、日本の水道水はそのままでも飲めますが、より安全性やおいしさを求める方は浄水器の利用がおすすめです。クリンスイの浄水器は、水道水に含まれる不要なものを除去しつつ、ミネラルはそのまま残すことができます。さまざまなタイプの製品があるので、下記リンクから自分にあうものを探してみましょう。

クリンスイの製品

関連商品

【参考文献】

※1 室蘭市|水道水とミネラルウォーター

※2 東京都水道局|水の硬度

※3 東京大学大学院総合文化研究科・教養学部あなたの水道水、「硬さ」調べました

※4 厚生労働省|e-ヘルスネット カルシウム

※5 厚生労働省|「統合医療」に係る 情報発信等推進事業 カルシウム

※6 厚生労働省|e-ヘルスネット マグネシウム

※7 厚生労働省|「統合医療」に係る 情報発信等推進事業 マグネシウム

※8 厚生労働省|e-ヘルスネット|骨粗鬆症の予防のための食生活

※9 厚生労働省|健康長寿に向けて必要な取り組みとは?100歳まで元気、そのカギを握るのはフレイル予防だ

※10 厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020 年版)

※11 厚生労働省|食べて元気にフレイルを予防するために

※12 厚生労働省|<酸化マグネシウム>便秘薬など副作用15件

※13 厚生労働省|A16.「抜け毛は、食事やヘアケアで予防も改善も可能です。」

合田 麻梨恵

管理栄養士・和食ライフスタイリスト
一般社団法人日本和食ライフスタイリスト協会理事代表。初めての海外訪問時に日本との素材の違いに驚愕し”和食の魅力”に目覚める。「和文化継承と予防医学発展を」をテーマに企業・自治体の健康経営支援やイベント企画、予防医学×食の専門家”和食ライフスタイリスト”養成、メディア出演、監修など多数。

JOURNAL

クリンスイの読みもの

記事一覧