2024.01.12

汗をかくメリットとデメリットとは?

忙しい毎日を送っていると、運動したりゆっくり入浴したりする時間をとれず、あまり汗をかかない日々を送っている方も多いかもしれません。しかし、日常的に汗をかく習慣を付けておくと、さまざまなメリットをもたらします。

今回は汗をかくメリット・デメリット、良い汗と悪い汗の違い、良い汗をかくポイントなどについて解説します。


INDEX

汗をかくってどういうこと?

そもそも、人はどうして汗をかくのでしょうか。まずは、汗をかく理由や汗の種類について解説します。

汗をかく理由

汗は、体温を調節する役割を担っています。

たとえば風邪をひいて熱を出した時や運動をして体温が上がった時、室温や気温が高い時などに人は汗をかきます。汗をかくと、水分が蒸発する際に皮膚表面の熱を奪うため、体を冷やしてくれます。つまり、道路に「打ち水」をして涼しく感じるのと同様の役割を、汗が担っているのです。

もしも汗をかかなければ、体に熱がこもり続けて体温を一定に保てず、身体機能に支障をきたしてしまいます。汗は私たちが生命機能を維持し、健康に生きるために欠かせない機能なのです。

汗の種類

汗には、体温が上昇した時に発汗する「温熱性発汗」のほか、「精神性発汗」「味覚性発汗」の3種類があります。※1

温熱性発汗は上昇した体温を下げるための発汗です。気温や室温が高い時や激しく体を動かした時などに全身から持続的に発汗します。温熱性発汗の99%は水であり、臭いはほとんどありません。

精神性発汗は驚いた時や緊張した時など、精神的な刺激によって出る汗です。手のひらや脇の下など限られた部位から発汗するのが特徴で、実は詳しいメカニズムはわかっていません。タンパク質やミネラルを含む汗であり、臭いが強いという特徴も持っています。

味覚性発汗は辛い食べ物を食べた時に、額や鼻などにかく汗です。味覚刺激から反射的に起こる発汗であり、食事が終わるとすぐに汗がひきます。

良い汗と悪い汗とは

汗は、赤血球などを取り除いた血液部分である血漿から作られています。血漿には各種ミネラル分が含まれていますが、汗腺のろ過機能によりミネラル分は血液に再吸収されるため、皮膚表面に出てくる汗は99%が水分です。※1 これが本来の汗であり「良い汗」といえる状態です。

しかし、あまりにも大量の汗をかいたり、ろ過機能がうまく働いていなかったりすると、ミネラル分を再吸収しきれず、汗と一緒に皮膚表面に出てしまいます。※1 ミネラル分が多く含まれる汗は蒸発しにくく、体温調節の効率が悪いという特徴があります。これが「悪い汗」の状態です。

さらに、悪い汗をたくさんかくと体に必要なミネラルまで体外に流出してしまうため、夏バテや熱中症の原因になる場合があります。健康を考えるならば、汗腺の機能を高めて良い汗をかく習慣をつけることが大切です。

良い汗をかく方法

汗腺のろ過機能は、汗をかく量に比例して機能性が高まるといわれています。※1 そのため、汗をかくことを避けるのではなく、日常的に適度な汗をかく習慣付けが良い汗をかくために重要です。

最も手軽な方法としては、有酸素運動があげられます。数十分程度のウォーキングなど、軽く息がはずみ、体温がゆるやかに上昇する程度の運動が理想的です。※1

また、半身浴や手足温浴を取り入れてもいいでしょう。入浴後はエアコンの涼しい風にあたると汗腺が閉じてしまうため、うちわであおぐ程度にして軽く汗をかく状態を保つと、より効果が高まります。※1


汗をかくメリット

汗腺の機能を鍛えて良い汗をたくさんかくことには、次のようなメリットがあります。

体温調整による熱中症予防

前述でも触れた通り、汗には体温を調節する役割があり、体にこもった熱を外に放出してくれます。そのため、日頃から良い汗をかく習慣をつけておくことは、熱中症予防においても重要です。

特に、突然気温があがった時や梅雨の合間の湿度が高い日などは、体が暑さに慣れておらず、熱中症を起こしやすくなります。※2 軽い運動を習慣づけて気温に関わらず汗をかく機会を作っていると、夏の暑さに負けない体を作ることにつながります。

皮膚の保湿や抗菌作用

汗は体温調節のほかにも、皮膚を保湿する役割を持っています。汗には乳酸ナトリウムや尿素といった天然の保湿成分が含まれており、皮膚の潤いを保持してくれるのです。※1

また、細菌の増殖を抑制する作用もあります。IL-37やβ-ディフェンシン、 ダームシジンといった抗菌ペプチドにより、皮膚のトラブルを防いでくれます。※1


汗をかくデメリット

一方で、汗をかくことには一定のデメリットもあります。代表的な2つのデメリットを紹介します。

かゆみやあせもにつながる可能性がある

汗をかくことは大切ですが、体に付着した汗を放置していると皮膚表面の細菌が増殖し、かゆみやあせもの原因になったり、アトピー性皮膚炎が悪化したりする可能性があります。※1 特に、汗のたまりやすい関節部や首周りでは影響が大きくなります。

とはいえ、皮膚炎の悪化を防ぐために発汗を避ける必要はありません。汗が体に付着したまま放置せず、早めに入浴する、塗れたタオルで拭くなどの対策を行い、皮膚を清潔に保ちましょう。※1

体臭が気になる可能性がある

前述でも触れた通り、本来の汗は99%が水分であるため、体から出たばかりの汗は無臭です。しかし、脇の下に多く分布する汗腺の「アポクリン腺」から出た汗は白く濁っており、脂質やタンパク質などの成分を含んでいます。※1 そのため「ワキガ臭」の原因になることがあるのです。

また、全身に分布する「エクリン腺」からの発汗には臭いの原因成分がほとんど含まれませんが、皮脂などを混ざりあうことで臭いが発生する場合があります。※1

皮膚炎の防止と同様に、汗をかいたまま放置せず、入浴や清拭などによって皮膚を清潔に保つことが大切です。


気になるQ&A

ここでは、汗をかくことについてよくある質問に答えていきます。

汗をかくのはダイエットにつながるの?

たくさん汗をかくことは「基礎代謝が高くなる=痩せやすくなる」というイメージがあるかもしれませんが、汗をかくことそのものがダイエットになるわけではありません。

基礎代謝とは、呼吸や拍動など生命活動を維持するために消費されるエネルギーで、一般的には年齢とともに低下していきます。※3 基礎代謝を高めれば何もしなくても消費されるエネルギー量が増えるため、痩せやすい体質づくりにつながりますが、発汗量と基礎代謝には関連性がありません。つまり、たくさん汗をかけば消費エネルギーが増えるわけではないのです。

また、汗をかきやすくなる原因として、隠れ肥満や冷え性、ストレス、ホルモンバランスの乱れ、バセドウ病や糖尿病などの病気が隠れているケースも考えられるといわれています。汗をかくのは良いことですが、何もせずに大量の汗をかくなど気になる症状がある場合には受診を検討しましょう。

サウナで汗をかくメリットは?

サウナに入って体温が上昇すると、全身の汗腺から汗が出てきます。普段運動をしない人でも汗腺の機能を鍛えられるだけでなく、老廃物や疲労物質が汗とともに体外に排出されて、体の調子を整えてくれるとされています。※4

ほかにも、脈拍が増えて血流が促進されるため、酸素や栄養が末端組織まで供給されます。これにより、肉体疲労の回復や肩こり・腰痛の解消、冷え性の改善効果などが期待できます。※4

子どもは汗をかきやすいのか?

子どもは大人よりも汗をかきやすいイメージがあるかもしれませんが、実はその認識は誤りです。

子どもは汗腺などの体温調節機能が未発達であり、大人のように汗をかいて熱を発散することができません。※5 このため、頭や躯幹部の皮膚血流量を増加させることで体温調節を行うのですが、真夏の炎天下などには熱をうまく発散できず、深部体温が大きく上昇してしまうのです。※5

大人よりも熱中症リスクが高いため、「子どもはよく汗をかくから大丈夫」と油断せず、服装の調節や水分補給などこまめに熱中症対策を行いましょう。


汗をかく前には水分補給が重要

健康を維持するためには良い汗をかく習慣づくりが大切ですが、汗をかく前には水分補給が必要です。体調を崩して水分摂取量が減ったりして「脱水症」を起こすと、汗が出なくなることがあるのです。脱水症が重度になると、頭痛や吐き気、意識障害などを引き起こすこともあります。※6 脱水症については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

「喉がいたな」と感じた時にはすでに脱水を起こしている証拠ですので、それよりも前に水分補給する意識が大切です。また、汗をかきやすい入浴時や睡眠時は水分が不足しやすいため「入浴後と起床時」の水分補給を習慣化しましょう。

日常的な水分補給であれば、水か麦茶などノンカフェインのお茶がおすすめです。運動をして汗をかいた後や熱中症を予防したい場合などには塩分補給も必要なため、スポーツドリンクや経口補水液を摂取するといいでしょう。

汗をかくことはメリット・デメリットがある

汗をかくことには、熱中症予防や皮膚の保湿、抗菌作用による皮膚トラブルの防止といったメリットがあります。一方で、かゆみやあせも、体臭につながるなどのデメリットもありますが、これらは入浴や清拭によって汗を放置しないことで対策が可能です。体の健康を維持するためにも、日常的に良い汗をかく習慣づくりを心がけましょう。

また、良い汗をかくために欠かせないのが水分補給です。体内の水分量が低下すると汗をかきにくくなるだけでなく、脱水症を引き起こす可能性が高まります。手軽にたっぷり水分を摂取したいなら、安全性が高く、ミネラルウォーターに負けないほどミネラル分が豊富な水道水がいいでしょう。

「より安全な水が飲みたい」「美味しく水分を補給したい」という方には、浄水器がおすすめです。こちらの記事では、自宅に合った浄水器選びのポイントを紹介しておりますので、ぜひあわせてご覧ください。


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参考

※1 NPO法人日本アトピー協会通信紙

※2 環境省|熱中症を防ぐためには

※3 厚生労働省|e-ヘルスネット|加齢とエネルギー代謝

※4 公益社団法人日本サウナ・スパ協会|サウナならではの身体効果

※5 環境省|熱中症を防ぐためには|2.高齢者と子どもの注意事項

※6 環境省|熱中症環境保健マニュアル2022

【監修者】 谷口英喜(たにぐちひでき)

社会福祉法人恩賜財団済生会横浜市東部病院患者支援センタ一長
1991年福島県立医科大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院麻酔科で勤務。その後、神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科教綬を経て、2016年より現職。脱水症・かくれ脱水の専門家としてテレビ・ラジオ番組等に多数出演。

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