「美容や健康のためにも、水はたくさん飲んだ方がいい」という言葉を耳にしたことがある方も多いと思います。しかし、水の飲み過ぎは体にとって本当にいいことなのでしょうか?
本記事では、水の飲み過ぎが体にもたらすさまざまな影響について詳しくご紹介します。また、水の重要性や適切な水分補給のポイントついても解説するので、ぜひ参考にしてください。
水の飲み過ぎは体にいいの?悪いの?
私たちが生命を維持するうえで、水はなくてはならない非常に重要な存在です。習慣的に適切な量の水を飲むことは、健康な体を保つために必要不可欠な行為といえます。※1 しかし、だからといって水を必要以上に飲み過ぎてしまうと、ときに人体に悪影響をもたらす可能性があるのも事実です。
過度な水分摂取は「多飲症」や「水中毒」などの原因にもなり得るため、水の飲み過ぎには十分に注意しましょう。水は「たくさん飲めばいい」というわけではなく、「日々、適量をこまめに摂取する」ことが重要です。※1
多飲症ってなに?
「多飲症」とは、日常生活に支障をきたすほどの過剰な飲水を繰り返す病態を指します。
多飲症になると自身で飲水量をコントロールできなくなり、水の飲み過ぎが原因で下記のような心身異常が見られるようになります。
【多飲症の症状】
- 嘔吐
- 胃もたれや胸やけ
- めまい
- 全身のむくみ
- 頻尿や夜尿
- 高血圧
- 体重の増加
など
さらに、多飲症が慢性化すると、血性心不全や骨粗鬆症などの合併症の発症リスクも高まります。
多飲症の原因としては、精神疾患、遺伝的なものやストレス、薬物などが影響しているという説もありますが、いずれも明確な理由は定かにはなっていません。なかにはいくつかの要因の複雑な絡み合いで、多飲症を発症してしまう方もいるようです。※2
また多飲症の症状が重篤化した患者は、この後説明する「水中毒」の症状に悩まされることも少なくありません。
水中毒ってなに?
「水中毒」とは、水の飲み過ぎが原因で、心身にあらゆる不具合が生じる病態です。特に多飲症患者は水中毒になりやすい傾向にあり、症状が重症化した場合、命が危険にさらされる可能性もあります。※3
水中毒は、体内の水分貯留が過度に行われ、血中のナトリウム濃度が著しく低下することで起こる「低ナトリウム血症」が主な発症原因であると考えられています。※3 水中毒を発症すると、頭痛や意識障害など、体にさまざまな悪影響が生じます。
水中毒の症状ってどんなの?
水中毒の症状は多岐に渡り、代表的な症状としては頭痛や嘔吐、失禁や意識障害などが挙げられます。
ただし、最近、では水中毒は「軽度・中度・重度」と、症状の程度を段階分けして考えられることが多く、それぞれ具体的な症状や治療法が異なります。詳細は下記の通りです。※2
【軽度の水中毒】
ー症状ー
- 呂律が回りにくい
- 頭痛や胸やけがする
- 頻尿・夜尿
- 1日で4%前後の体重増加
など
ー治療法ー
必ずしも患者の行動制限をする必要はないので、飲水制限と排尿指導が行われる
【中度の水中毒】
ー症状ー
- 意識がもうろう状態にある
- 興奮・暴力的な状態になる
- 多量の尿失禁
- 嘔吐や痙攣
- 短時間での急激な体重増加
など
ー治療法ー
- 患者の行動制限を要し、身体的な管理・監視が必要とされる
- 症状の更なる悪化を防ぐための対策が取られる
【重度の水中毒】
ー症状ー
- 意識障害がある
- 重篤な痙攣
- 吐血
- 肺水腫
など
ー治療法ー
- 医療的介入を要し、集中的な治療を行う
- 状況に応じて、より高度な治療が行える施設や病院などへの転院が検討される
水中毒で死亡事例もある
上述したように、水中毒は私たちの体にさまざまな悪影響を及ぼす恐ろしい症状です。実際に、これまで水中毒による死亡事故は、世界各国で複数報告されています。特にアメリカ人女性の水中毒による死亡事故は、有名な事象として知られています。
「トイレに行かずにどれだけ水を飲めるか」を競う「水飲みコンテスト」に参加したアメリカ人女性が、短時間で約7リットルもの水を飲んだ結果、水中毒を発症し命を落としてしまったのです。※4
日常生活でここまで多量の水を一気に飲むケースは、あまりないと思います。しかし、この死亡事故からもわかるように、「水を飲み過ぎる」という、一見当たり障りのない行為が、ときに人の命をも危ぶませてしまうということを、私たちは正しく理解しておく必要があります。
多飲症と水中毒の違い
多飲症と水中毒は混同して考えられがちですが、この2つの病態はそれぞれを切り離して理解しておくことが非常に重要です。なぜなら、多飲症と水中毒を同じものとして捉えてしまうと、適切な治療を行えなくなってしまうかもしれないためです。
「多飲症」とは、水を過剰に飲み過ぎてしまう「行動」を意味する病態です。一方「水中毒」は、過剰な水分摂取により低ナトリウム血症を引き起こしている「状態」を意味します。※2
確かに水中毒は多飲症により誘発される場合が多いですが、水中毒は一過性の症状であることも多く、必ずしも「多飲症=水中毒」と結びつくわけではありません。
水中毒を発症していない多飲症患者に対しての過度な飲水制限は、根本的な病状の解決にはならず、むしろ患者の心身に大きな悪影響を与える危険性があります。
多飲症と水中毒は、それぞれの重症度を適切に区別して、各患者に合った独自性の高い治療を行うことが重要なのです。
適度な水の摂取は生きるために必要
これまで水の飲み過ぎが心身にもたらす悪影響について解説してきましたが、だからといって「水をあまり飲まない方がいい」というわけではありません。
人間の体に占める水の量は体重の約60%であるはということからもわかるように、適度な水の摂取は、私たちが生きていくために必要不可欠な行為です。※1
適度な水を摂取することが私たちの体にとっていかに重要であるかは、下記の記事でも詳しくご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
水が足りなくても危ない
水の過不足は、どちらの場合も私たちの健康維持に悪影響を与えます。私たちは日常生活を送るだけで、汗や尿、皮膚・呼気からの蒸発などから1日約2.5Lもの水分を排出するといわれています。※1
そのため、適度な水分補給を1日でも怠ると、体内の水分量があっという間に不足し、体にさまざまな不調が生じるようになってしまうのです。
たとえば、私たちの体は水分を5%失うだけで、脱水症状や熱中症などのリスクにさらされます。さらに10%失うと循環不全や筋肉の痙攣が起き、20%失うと命を落としてしまうのです。※1
このように、水の過剰摂取は危険ですが、それと同じ位、水の不足も人体にとって非常にハイリスクであるということを覚えておきましょう。
1日に必要な水の量はどれくらい?
「適度な水分補給」といわれても、「具体的にどれ位の量の水を摂取したらいいかわからない」という方も多いのではないでしょうか?
一般的に、私たちは1日に約2.5Lの水の摂取が望ましいといわれています。2.5Lという数字は先ほどお伝えした通り、私たちが1日に排出する平均水分量と同じ数字です。※1
つまり、1日に排出する水分量と摂取する水分量の差が0になるよう水を飲むことが、人間にとって理想的な状態といえるでしょう。
ただし2.5Lという数字はあくまで平均値であるため、必ずしもすべての人に当てはまるというわけではありません。たとえば日中の運動量が多い、体質的に汗をかきやすいという方の場合、より多くの水分を摂取する必要があるでしょう。
「1日2.5Lの水を摂取する」というのはひとつの目安として捉え、具体的な水分摂取量については、自身の習慣や体調と照らし合わせて考えることが大切です。ここで注意して欲しい点として、2.5Lの水とは、飲む水分から半分と食事に含まれる水分から半分との合計になります。したがって、飲む水分は1.25L程度が目安です。
水分補給のコツ
一口に「水分補給」といっても、やみくもに水を飲めばいいというわけではありません。より効率的に体に水分を取り入れるには、いくつかのポイントがあります。そこで次は、水分補給する際の具体的な4つのコツについて詳しくご紹介します。
また、以下の記事では水分補給におすすめの飲み物や適切な水分補給についての知識が深められるので、こちらもぜひ参考にしてください。
水は喉が渇く前にこまめに飲む
「水は喉が渇乾いてから飲む」という方も多いと思いますが、実は喉の渇きは、既に体内の水分が不足していることのサインでもあります。そのため水は喉が渇く前に、こまめに飲もうとする意識と行動が重要です。
また、汗をかきやすい夏場は積極的に水分を摂る方が多いですが、喉の渇きを自覚しにくい冬場は、水分補給を怠りがちな方が多い傾向にあります。上述のように私たちの体からは毎日約2.5Lもの水分が排出されているため、冬場であっても水分補給を怠ると、私たちの体はすぐに水不足に陥ってしまいます。冬場も夏場と同様に、常にこまめな水分補給の意識と行動を行いましょう。
水をこまめに飲むことの重要性については、以下の記事でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
糖質が入ったドリンクは控える
水分補給する際の飲み物は、炭酸飲料や果汁飲料などの糖質が入ったドリンクはできるだけ避けましょう。なぜなら、糖質が入ったドリンクは血糖値の急激な上昇をもたらすほか、さまざまな健康被害の要因となり得るからです。
糖質の摂取量が多くなると、肥満や糖尿病などの生活習慣病を患いやすい傾向にあります。※5,6 また肥満が原因で高血圧症や心血管疾患などを患う方も少なくありません。※7 このようなリスクを低減させるためにも、水分補給時にはなるべく水やお茶など無糖のドリンクを選ぶようにしましょう。日常の飲料水への意識が、生活習慣の改善にも繋がります。
脱水症・熱中症予防には水だけNG
脱水症・熱中症予防の観点で水分補給を行う際は、スポーツドリンクや経口補水液など、塩分と微量の糖分が含まれているドリンクの摂取をおすすめします。※8
汗を舐めると少し塩味を感じることからもわかるように、汗にはミネラル類の一種であるナトリウムが含まれています。炎天下の運動時などにかく大量の汗で、水分と一緒に体内のナトリウムも排出されているのです。
しかし、汗をたくさんかいたからといって水のみで水分補給を続けると、失われたナトリウムを補給できないまま、血中の塩分濃度が低下し続けます。そして結果的に、脱水症や熱中症を引き起こしてしまうのです。
このような事態を避けるためにも、脱水症・熱中症を予防するためには、水分と一緒にナトリウムも補給できる、スポーツドリンクや経口補水液の補給が望ましいのです。
入浴後と就寝時に飲む
入浴中と就寝中は、日常生活の中でも特に汗をかきやすいタイミングといわれています。入浴の前後や就寝前・起床後には、意識的に水を飲み、体内の水分量を維持するよう心がけましょう。※1
特に夏場は、就寝中に脱水症・熱中症を起こす方が多く見られる時期です。睡眠中は自身で脱水症状を自覚できないため、症状が重症化しやすい傾向にあります。※9
脱水症・熱中症の発症リスクを抑えるためにも、就寝前にはコップ1杯の水を飲んでからベッドに入り、体内の水分量維持に努めましょう。
構成時の資料にはなかったですが、上記参考にしています
水の飲み過ぎには気をつけよう
今回ご紹介したように、水の飲み過ぎは多飲症・水中毒につながるほか、水を飲まな過ぎることも、脱水症や熱中症につながる危険な行為です。
私たちが毎日を健やかに過ごすためには、常に適度な水分補給の意識と行動が何よりも重要です。水の存在をより身近なものとして感じられる工夫を、日々の生活の中に積極的に取り入れてみましょう。
水分補給のためにミネラルウォーターを購入している方も多いと思います。しかし私たちにとってより身近な存在である「水道水」の摂取を習慣づけることで、毎日の水分補給がより手軽に行えるようになるでしょう。
あまり知られていませんが、実は水道水のほうがミネラルウォーターよりも水質基準が厳しく、ミネラルが豊富に含まれています。さらに「浄水器」を利用すると、残留塩素や(カルキ臭)も取り除かれたり除去できたり、ペットボトルと比較すると9割以上99.6%の温室効果ガスをカットできたりとより安心・安全・環境に優しく水を飲めるのです。
クリンスイでは、取り付けが楽々な蛇口直結型や、冷蔵庫に収納できるポット型など、さまざまな浄水器を扱っています。自分に合った浄水器がきっと見つかるはずなので、ぜひクリンスイの浄水器をチェックしてみてくださいね。
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参考
※2 医学書院|多飲症・水中毒
※3 地方独立行政法人山梨県立病院機構 山梨県立北病院|14.多飲症・水中毒とは何ですか?
※8 農林水産省|消費者の部屋|熱中症対策には、水よりスポーツドリンクを飲むとよいと聞いたのですがどうしてですか。また、経口補水液との違いも教えてください。
【監修者】 谷口英喜(たにぐちひでき)
社会福祉法人恩賜財団済生会横浜市東部病院患者支援センタ一長
1991年福島県立医科大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院麻酔科で勤務。その後、神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科教綬を経て、2016年より現職。脱水症・かくれ脱水の専門家としてテレビ・ラジオ番組等に多数出演。