日々の健康管理のために、積極的な水分補給は大切です。しかし、水分を摂りすぎるとかえって体に負担がかかり、さまざまな不調につながる可能性もあるのです。
この記事では、1日で摂るべき水分量の目安や、水分を摂りすぎると起こり得る症状を解説します。また、水分補給をするときに気を付けたいポイントも紹介します。
1日で摂りすぎになる水分の量ってどのくらい?
水分が摂りすぎになる目安には個人差がありますが、1時間に1L以上の真水(塩分などを含まない水)を飲むのは控えた方が良いでしょう。
水分は体内で活用された後、腎臓で処理されて尿となり体外へ排出されます。腎臓での尿の処理能力は成人で16ml/分で、1時間では16×60=960ml、つまり約1Lです。
1時間以内に真水を1L以上飲むと、水分を腎臓で処理しきれなくなり、不要な水分が体内に滞留されたままになります。その結果、むくみや頭痛、めまいを引き起こす「水中毒(みずちゅうどく)」と呼ばれる状態になる可能性があります。
水分を1日に摂りすぎるとどうなる?
水分の摂りすぎによる症状には、以下のようなものがあります。
- 疲労感やだるさを感じる
- 体のむくみにつながる
- トイレが近くなる
順番に見ていきましょう。
疲労感やだるさを感じる
塩分が含まれていない水分を摂りすぎると、腎臓の処理能力が追いつかず、体液が薄まってしまいます。その結果、体内のナトリウム濃度が低下し、脱水状態と同じように、疲労感やだるさを覚える可能性があります。
重症になると、けいれんや意識障害が生じるケースもあるため、注意が必要です。
体のむくみにつながる
水分を摂りすぎると、一時的に体のむくみが起きることもあります。
過剰な水分摂取は、血管を流れる血液量の増加につながります。それにより不要な水分の排出が上手くいかなくなり、余計な水分が体内に残ってしまうため、体にむくみが生じるのです。
また血液量が増えると、血管にかかる圧力が増加し、血圧が高くなります。高血圧の症状の一つにむくみがあるのもこのためです。
トイレが近くなる
必要以上に水を飲んでいる場合、トイレが近くなることもあります。これは腎臓が、摂りすぎている水分を、尿として排出しようとするためです。
水分をたくさん摂ったからといって、健康や美容に良い効果があらわれるわけではありません。水分補給は脱水予防や健康維持に欠かせませんが、摂りすぎには注意が必要です。
摂りすぎにならない上手な水分補給の方法
水分の摂りすぎには注意したいものの、体にとって水分補給は重要で、無理に減らす必要はありません。大切なのは、自分に必要な水分量を知り、過不足なく補給することです。
まずは自分が1日に必要な水分量を知る
水分の摂りすぎを防ぐには、自分に必要な水分量を知ることが大切です。
一般的に、成人に必要な水分量は体重1kgにつき約40mlと言われます。たとえば体重50kgの方であれば、1日に必要な水分量は約2Lです。ただし、1日3食の食事に約1Lの水分が含まれるため、残りの1Lを飲み水として摂取すると良いでしょう。
1日に必要な水分量には個人差があります。全ての人にこの計算が当てはまるわけではないため、あくまで目安程度にしましょう。
適切な種類・量の水分を摂取する
自分に必要な水分量を把握できたら、それを目安に水分補給を心がけたいところ。基本的にカフェインを含む飲みものやアルコールには利尿作用があるため、水分摂取には向いていません。水や麦茶などを選びましょう。
ただし、カフェインに耐性がある方の場合、カフェインを含む飲みものでも水分摂取になると言われます。一方、アルコールはいくら飲んでも水分補給にはなりません。尿の量を増やして体内の水分を排出してしまうため、かえって水分不足に陥る可能性もあります。
水分補給をする際に気を付けたい2つのこと
ここでは、水分補給をする際の注意点を紹介します。水分の摂りすぎを防ぎ、健康維持につながる水分摂取の方法を身に付けましょう。
食事から摂取する量も知っておく
先ほどお伝えしたとおり、1日3食きちんと食べていれば、食事から1Lの水分が摂取できると言われます。汁物やスープはもちろん、野菜やご飯にも水分は含まれます。そのため、1日に必要な水分量から1Lを差し引き、残りの量を飲みもので摂取すると良いでしょう。
食事で摂取する分を1日の水分量にカウントしないと、水分の摂りすぎになる可能性があります。1日3食しっかり食べるのが難しい場合は、献立にスープを加えるなどして、無理のない水分補給を心がけましょう。
少しずつ飲むことを心がける
水分を効果的に吸収するポイントは、少量の水を、1日に数回飲むことです。おすすめは6オンス(180ml)の水を8回に分けて飲む方法で、これを「6オンス8回法」と呼びます。
喉が渇く前から水分補給するのも大切です。喉の渇きは、脱水のサインの一つ。小まめな水分補給を心がけることで脱水を防ぎ、体内の水分バランスも保たれやすくなります。
自分にちょうど良い量の水分を摂ろう
水分を摂りすぎると、さまざまな不調が生じる可能性があります。まずは1日に自分が必要な水分量を知りましょう。そのうえで、食事から摂れる水分量や飲みものの種類にも気を付けながら、適切な量を摂取するのが大切です。
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谷口 英喜
日本麻酔科学会を始め、多数の学会で専門医・指導医を務める麻酔医師・医学博士。神奈川県済生会横浜市東部病院患者支援センター長も務める。栄養分野も専門としており、脱水症に対する治療法「経口補水液療法」の第一人者としても知られている。『いのちを守る水分補給: 熱中症・脱水症はこうして防ぐ』を始めとした著書も多数。