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料理家・渡辺有子さんにとって水とは? 後編
前編では料理をする上で欠かせない水の大切さを教えてくれた料理家の渡辺有子さん。後編で伺うのは、ずばり、和食に合う水とは?水も地域や水系によって味が違い、それぞれに個性もあるが、渡辺さん曰く……。
2022.02.24
「私が作る料理で水の役割はかなり大きいですね」と語るのは料理家の渡辺有子さん。季節の食材を中心とした渡辺さんのレシピは、素材の良さを活かし、なるべく手を加えないことによる絶妙なさじ加減がおいしさにつながっている。
「季節のものをきちんと味わいたいという思いが根本にあるので素材が第一。例えば、ポタージュを作るときも水と野菜だけで作ることがほとんどです。だからこそ料理に使う水は本当に重要で、素材の味をうまく引き出せるか、水が味を左右するといっても大げさではないくらい」
さらに水と切っても切り離せない塩との関係もある。
「塩もまた大事で、お酢や砂糖など、他の調味料とはあきらかに違う。水と塩がベースにあって、そこに野菜や果物、肉、魚という素材が絡む。この3つの関係性が、私の料理を表現する上でとても大事なことなんです。水と塩は、素材との相性をいかようにでも変えてくれるものだと思っています」
今回、クリンスイの「出汁をおいしくするためのポット型浄水器」の水を使用し、昆布かつお出汁で作ってくれたのは「冬の酢浸し」。
「季節の食材を使った、出汁とお酢と塩だけのシンプルな酢浸し。今日は、カブと富有柿、キクラゲを入れました。富有柿は秋からありますが、1月頃までおいしく食べられる。今の季節なら干し柿、白菜やリンゴを入れてもいい。最後に刻んだ柚子の皮を散らして完成です」
出汁をひくときは、沸騰した水に削り鰹を入れすぐに火を止める。この時、沸かしすぎないのがポイント。さらに、冷まして常温にしてから使うこと。熱すぎると酢が飛んでしまい、冷たすぎると塩が溶けにくい。野菜や果物を入れて、半日くらいなじませるのが理想と渡辺さん。
「急いでいるときは1時間でもいいので寝かせてください。この酢浸しは出汁を冷やした、ひんやりと冷たい料理ですが、冬に暖かい部屋でみずみずしいものを食べるっていいですよね。旬の食材を究極にシンプルに調理するレシピだからこそ、水、塩、素材の相性の大切さがよくわかると思います」
冬の酢浸し 作りやすい分量
―昆布かつお出汁の取り方―
クリンスイ「お出汁をおいしくするためのポット型浄水器」でつくった水を鍋に1.5~2ℓ入れ、昆布4~5cmを浸し20分ほどおき、中火弱にかける。ゆっくりフツフツしてきたら、削り鰹(薄削り)を15~20g入れ、火を止める。冷ましながら待ち、ザルで濾す。
photo/Norio Kidera
text/Chizuru Atsuta
edit/Akio Mitomi
料理家。素材の味わいを引き出すやさしい料理と、センスよくすっきりした暮らしぶりが人気。『渡辺有子の家庭料理』など著書多数。また食にまつわるショップ『FOOD FOR THOUGHT』を都内に3店舗展開、作家の器やオリジナル商品など自身が使いたいものをセレクトして扱う。https://foodforthoughttokyo.com