2022.02.10

料理家・渡辺有子さんにとって水とは? 前編

photo/Norio Kidera text/Chizuru Atsuta edit/Akio Mitomi

自分の料理を表現する上で大切なことは、水、塩、素材の関係。

「私が作る料理で水の役割はかなり大きいですね」と語るのは料理家の渡辺有子さん。季節の食材を中心とした渡辺さんのレシピは、素材の良さを活かし、なるべく手を加えないことによる絶妙なさじ加減がおいしさにつながっている。

「季節のものをきちんと味わいたいという思いが根本にあるので素材が第一。例えば、ポタージュを作るときも水と野菜だけで作ることがほとんどです。だからこそ料理に使う水は本当に重要で、素材の味をうまく引き出せるか、水が味を左右するといっても大げさではないくらい」

さらに水と切っても切り離せない塩との関係もある。

「塩もまた大事で、お酢や砂糖など、他の調味料とはあきらかに違う。水と塩がベースにあって、そこに野菜や果物、肉、魚という素材が絡む。この3つの関係性が、私の料理を表現する上でとても大事なことなんです。水と塩は、素材との相性をいかようにでも変えてくれるものだと思っています」

今回、クリンスイの「出汁をおいしくするためのポット型浄水器」の水を使用し、昆布かつお出汁で作ってくれたのは「冬の酢浸し」。

「季節の食材を使った、出汁とお酢と塩だけのシンプルな酢浸し。今日は、カブと富有柿、キクラゲを入れました。富有柿は秋からありますが、1月頃までおいしく食べられる。今の季節なら干し柿、白菜やリンゴを入れてもいい。最後に刻んだ柚子の皮を散らして完成です」

出汁をひくときは、沸騰した水に削り鰹を入れすぐに火を止める。この時、沸かしすぎないのがポイント。さらに、冷まして常温にしてから使うこと。熱すぎると酢が飛んでしまい、冷たすぎると塩が溶けにくい。野菜や果物を入れて、半日くらいなじませるのが理想と渡辺さん。

「急いでいるときは1時間でもいいので寝かせてください。この酢浸しは出汁を冷やした、ひんやりと冷たい料理ですが、冬に暖かい部屋でみずみずしいものを食べるっていいですよね。旬の食材を究極にシンプルに調理するレシピだからこそ、水、塩、素材の相性の大切さがよくわかると思います」

冬の酢浸し  作りやすい分量

  • カブ        2個
  • キクラゲ(生)    100g
  • 柿(富有柿)か干し柿 1個
  • 柚子の皮      1/3個分
  • 昆布かつお出汁  300ml
  • 米酢 大さじ1
  • 塩 小さじ1
  1. 出汁に米酢、塩をよく混ぜて塩を溶かしておく。
  2. カブは茎を少し残して皮をむき、茎の汚れを流水で洗い、4等分に切り、さらにそれぞれを6等分に切る。塩ふたつまみ(分量外)をふり、なじませておく。
  3. キクラゲは硬い部分を取り除き、1~2分茹でてザルに取り水気をふいてから、ひと口大に切る。柿は4等分にしてから皮をむき、さらに4等分に切る。
  4. バットに1を注ぎ入れ、2と3を入れ、冷蔵庫で1~2時間以上(半日)冷やしながら浸す。盛り付ける前に柚子の皮の細切りを散らす。

昆布かつお出汁の取り方―
クリンスイ「お出汁をおいしくするためのポット型浄水器」でつくった水を鍋に1.5~2ℓ入れ、昆布4~5cmを浸し20分ほどおき、中火弱にかける。ゆっくりフツフツしてきたら、削り鰹(薄削り)を15~20g入れ、火を止める。冷ましながら待ち、ザルで濾す。

photo/Norio Kidera
text/Chizuru Atsuta
edit/Akio Mitomi

わたなべゆうこ

料理家。素材の味わいを引き出すやさしい料理と、センスよくすっきりした暮らしぶりが人気。『渡辺有子の家庭料理』など著書多数。また食にまつわるショップ『FOOD FOR THOUGHT』を都内に3店舗展開、作家の器やオリジナル商品など自身が使いたいものをセレクトして扱う。https://foodforthoughttokyo.com

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