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【潤いのレシピ】藤澤進⼤郎(昼食編) アラミニッツのスープから生まれた「牡蠣と春菊の軽い煮込み」
フランス・ニースでのレストラン、神楽坂の人気ワインバー[ビコック]などを経て、現在は夫婦でフランス料理のビストロ[松㐂(まつき)]を営む藤澤進大郎さん。第2回目の今回は「牡蠣と春菊の軽い煮込み」を作っていただきながら、松㐂の営みから見えてきたものを聞きました。末尾のレシピもお楽しみに。
2020.12.18
有名シェフの素材への向き合い⽅を聞きながら、⽇々の⾷から暮らしに潤いを与えるようなレシピを朝・昼・晩と三⾷ご提案いただく連載企画【潤いのレシピ】。今回はフランス・ニースでのレストラン修業を経て、神楽坂の⼈気ワインバー[ビコック]でシェフを務め、2017 年に夫婦でフランス料理のビストロ[松㐂(まつき)]をオープンした藤澤進⼤郎さんです。コロナ期間中は同世代のワイン⽣産者の元に通い、畑仕事を⼿伝っていたという藤澤さん。⼭梨・明野に通う中で、野菜や料理への向き合い⽅が少しずつ変わってきたとか。ニース時代から作り続けている「スープ・オ・ピストゥー」を作りながら、どんどんシンプルに削ぎ落とされている味わいの構造について語ってくれました。末尾のレシピもお楽しみに。
もともと、⾃然栽培の野菜ののびのびとした味わいが好きだったという藤澤さん。今は茨城県つくばの『ポム・ド・テール』や、⻑野県佐久の『藤井農園』、千葉の『テラ・マードレ』から野菜を仕⼊れているそう。いずれも有機や無農薬で、⾼品質の野菜を取り扱うところです。
「⾃然にできているワインを扱っているので、そうしたワインに寄り添う料理を常に頭に描いています。もともとシンプルにと思っていましたが、実際に⾃分が畑に通うようになって、より削ぎ落として⾏くことを意識するようになりました」
さて、そんな中での「スープ・オ・ピストゥー」です。これは藤澤夫妻が09年に南フランス、ニース近郊のラ・チュルビという村にあるレストランで修業をしたときの思い出の味。現地では、⽩インゲン⾖が獲れる頃になると作り始めていたといいます。
本場のレシピは塩漬け豚⾁でブイヨンを取り、ベーコンや野菜、⽩インゲン⾖をじっくり煮込むというもの。オリーブオイルを⼊れてバジルをすりつぶす「ピストゥー」というペーストを溶かし込みながら⾷べます。
[松㐂]をオープンしてからは、豚⾁やベーコンを⼊れずに、岩⼿県産のホロホロ⿃でだしを取り、⾖と野菜の味を引き⽴てるレシピにしているそう。
「今回、クリンスイのアルカリ⽔があるので、もう少しソリッドでシンプルな形で作ってみます」。だしを使わず、野菜と⾖、ほんの少しの⽣ハム、そして⽔だけで作るスープ・オ・ピストゥーです。
開店当時は「より美味しく」を⽬指していたと、藤澤さんは振り返ります。「今はそれよりも、素材本来の味を引き出すことを意識しています。シンプルにしたいと思った時に重要なのが、素材ひとつひとつの存在感、そしてそれら素材のポテンシャルを引き出す⽔です。その⽬線で、野菜も、⽔も、調味料も選ぶようになっていると思います」
⼀⼝⼤に切った野菜をオリーブオイルで炒めて、塩を2つまみ。⽔をひたひたより多いくらい⼊れたら⽣ハムを加えて煮⽴たせます。その後、蓋をして煮込みながら、数回にわたり⽔と塩を加えて味を整えていきます。
今回スープに使うのは北海道産の⽩インゲン⾖。⼀晩⽔に漬けて戻し、⼀度⽔切りして、新しい⽔に替えてゆでていきます。
「⾖のゆで汁はとてもいいだしになるんです。ゆで⽔にはクリンスイの浄⽔を使いましょう。塩をせずにゆでて、形が少し崩れるくらいまで煮えたら⽕を⽌めて、塩を⼊れます。⾖の味わいを際⽴たせたいので、野菜と⼀緒に煮込むのではなく、⾷べる直前にスープとあわせます」
ゆで⾖の状態で、すでに美味しそうな佇まい!「そう。これにオリーブオイルを少したらせば、イタリア家庭料理のような⼀品になります。美味しい⾖と、その味を引き出す⽔。この⼆つで⼗分。少し⾷べてみますか?」
⾖がゆで上がり、スープができたら、いよいよ仕上げ…ではありません。「ここから⼀旦冷まします。冷めていく過程で「味がのる」から。フランスではこうしたスープを夜に⾷べることが多いけれど、これは夜に作って朝に⾷べるイメージで作ってみました。朝から野菜がたっぷり取れる「⾷べるスープ」です。液体よりも具材の味に重きを置いたスープ。クリンスイのアルカリ⽔は、野菜の味の輪郭を残して味わいを引き出してくれるので、このスープ向きと⾔えますね」
さて、スープを冷ましている間にピストゥー作りです。フレッシュなバジルと松の実をミキサーに⼊れ、オリーブオイルとつなぎの⽔を⼊れてミキサーでペーストを作ります。摩擦熱を冷ましつつ、削ったグラナパダーノとペコリーノを半量ずつ加えて混ぜていきます。
⾷べる直前に⼩鍋でスープ、⾖の⽔煮を合わせて温めます。
ピストゥーを加えて⼀煮⽴ちさせれば完成です。「ビコック」時代は⽫の下にピストゥーをしき、その上にスープを注いでいたそうですが、「今は少し熱を加えることでバジルの⾹りを⽴たせています」と藤澤さん。
味を強めたり重ねたりすることなく、シンプルに味わいを引き⽴たせるために⽣み出された技法なのでしょう。
⼝に含むと、南仏の豊かな野菜の味わいが想起され、スープは喉を滑り落ちてすとんと胃に収まります。煮込まれた野菜を噛みしめると、優しい旨みがじんわり広がる。徐々に体が⽬覚めていくようなスープです。
材料 4〜5⼈分
作り方
今回、藤澤さんが使⽤したのは、美味しい⽔のブランド『Cleansui』のアルカルポットシリーズ「クリンスイ CP013」。電源を使わずに、浄⽔されたきれいなアルカリ⽔をつくれます。除菌も可能なフィルターで微細な雑菌や⾚サビ、鉛までしっかり除去。プロダクトデザイナー柴⽥⽂江⽒によるポットのデザインは、美しい曲線が印象的。キッチンにも⾷卓にもすっきりとなじむデザインです。(※現在は販売終了しております。)
https://cleansui.com/products/cp013
※カートリッジは引き続き販売中です。浄水用のポットにもご使用いただけます。
1982年、東京⽣まれ。⾼校時代に[マキシムドパリ]でアルバイトを経験し、その後フランス料理の道へ。[オテル・ド・ミクニ」で8年間修⾏し、南フランスや東京のレストラン、ビストロなど各地の名店で腕を磨き、神楽坂の「ビコック」でシェフとして働く。 2017年、⽣まれ育った中野に「松㐂」をオープン。