
水分不足で起こる脱水症とは?
症状や予防、チェック方法を知ろう
日頃からこまめに水分補給する習慣がなく、脱水症状に陥ったことがない人にとっては「このままで問題はないのか」と不安に思うこともなく、どこか他人事のように考えてしまいますよね。しかし、水分不足は脱水症を引き起こす原因になるため、水分の摂り方について見直す必要があるかもしれません。
そこで本記事では、水分不足が起こす脱水症について詳しく解説します。症状や予防法、治し方まで紹介するので、水分の摂り方に不安を感じている人は参考にしてみてください。
水分不足によって起こる脱水症とは?

脱水症とは、体内にある水分「体液」が減少した状態に陥る体調不良の総称です。体液は水・ミネラル(電解質)・タンパク質などで構成されており、体の約60%(成人)を占めています。水分の摂取不足や不感排泄及び有感排泄等の過剰排泄、もしくはこの両方が同時に起こると体液が減り、脱水症を引き起こしてしまうのです。
例えば、風邪をひいて十分な飲食ができず水分の摂取量が減ったり、下痢や嘔吐などによって排泄される水分量が増えたりすると脱水症に陥りやすくなります。脱水症は失われる水分の量によって軽度・中等度・重度の3段階に分けられており、最悪の場合、命にかかわる危険性もあります。とくに、乳児や高齢者、普段あまり運動せず汗をかく機会がない人などが陥りやすい傾向にあるため注意が必要です。
【脱水症の主な症状】めまい・頭痛・便秘など
脱水症は、体重に対する水分の減少率によって症状が異なります。全身の水分が2%減少すると喉の渇きを自覚し始め、3%を超えると汗が出なくなったり、めまいがしたりするなどの症状があらわれます。5%を超えると全身倦怠感や頭痛、吐き気などが起こり、6〜8%には意識障害や筋肉のけいれん、そして10%以上の水分を失えば死に至る可能性があるのです。
私たちは通常安静時でも尿や便、不感蒸泄(呼吸や皮膚から蒸発などで自然に失う水分)などにより、1日約1200mlの水分を失っています。人によっては、運動による発汗や下痢などで、さらに多くの水分を失うでしょう。食べ物や飲み物から水分を補充し、一定量の水分を保たなければ、脱水症によるさまざまな症状が出てきます。
脱水症が起こりやすいタイミング
脱水症が起こるのは、体内の水分が一定量よりも減少したときです。例えば、運動によって大量の汗をかくと、水分量が減ります。こまめに水分補給しなければ、水分量はさらに減ってしまい、脱水症が起こりやすくなるでしょう。また夏場は、高温・多湿によって汗の量が増えたり不感蒸泄が多くなったりする時期です。家の中で普段通りに過ごしていても、室温や湿度の上昇などにより脱水が起きて熱中症になる場合もあります。喉が渇いていなくても、水分を摂取することが重要です。
体調が悪いときは、とくに注意しましょう。下痢や嘔吐が続くと、体内の水分を多く失ってしまいます。水分を摂取できても体内に留めておけなければ、脱水症を引き起こします。発熱は体温の上昇により不感蒸泄と発汗量の増加につながるため、風邪をひいたときは脱水症への対策も必要です。
「かくれ脱水」に注意!

「かくれ脱水」とは、体重の1〜2%程度の水分が失われ、脱水症になりかけている状態のことです。めまいや頭痛などの自覚症状がないため、気付くのが遅れてしまい、重篤な状態になることもあります。とくに、子どもや高齢者はかくれ脱水になりやすいといわれているので、注意しましょう。
子どもの場合は、体内の水分量が体重の70〜80%と高いうえに体重あたりに失われる不感蒸泄量が多いため、一定量を保つのにたくさんの水分が必要です。しかし、子どもは脱水の訴えが少ないため、一緒に過ごしていても見落としてしまうことがあります。また高齢者は、喉の渇きを感じにくいため、水分の摂取量が減ります。さらに、加齢によって腎機能が低下したことで、水分や電解質を再吸収できず、体内の水分が失われやすいのです。
近年では、コロナ禍によるマスク着用が原因で脱水を起こす事例も増えています。マスクをつけたままだと、熱がこもりやすく喉の渇きを感じにくい状態になります。マスクを外すのが面倒で水分補給が減っている人も、「かくれ脱水」になりやすいため要注意です。
とくに冬は「かくれ脱水」になりやすい
冬は乾燥により湿度が低下し、不感蒸泄が増えやすくなります。汗をかいていなくても体内から出ていく水分量は増えるため、こまめな水分補給が大切です。しかし、冬は喉の渇きを感じにくく、水分摂取量が少ない人が多いものです。摂取する水分量よりも体内から出ていく水分量のほうが多くなれば、「かくれ脱水」が起きやすくなります。
とくに、冬はインフルエンザなどの感染症が流行しやすい時期となり、コロナ禍同様にマスクを着用することが冬に「かくれ脱水」になりやすい理由の一つといえるでしょう。
【かくれ脱水の主な症状】むくみ・皮膚の乾燥など
かくれ脱水が起こると、次のような症状が見られます。
- むくみ
- 皮膚の乾燥
- 口内のねばつき、食べ物を飲み込みにくい
- トイレの回数の減少
- 便秘
- 集中力の低下
- 疲れ
気になる症状があるときは、いつもよりも水分量を多くしたり、水分摂取の回数を増やしたりするなどの対策をしましょう。
脱水症のチェック方法
自分が脱水症になりかけているかどうか、簡単にチェックする方法があります。今回は3つのチェック方法を紹介します。脱水症にいち早く気付けるよう、定期的にチェックする癖をつけておきましょう。
1.尿の色でチェックする
体内の水分量が少ないと、尿の色は濃くなります。理想は薄い黄色ですが、黄色が濃くなるほど水分量が足りていない状態になります。茶色に近い尿の場合は、すでに脱水症を起こしている状態なので、すぐに受診が必要です。ただし、高齢者では尿の色の変化が鈍く変化を待っていると、脱水症の診断が遅れることがあるので注意が必要です。
2.爪を押す
最初に、手の親指の爪を逆の手の指で押さえます。指を離して、白くなった爪がピンク色に戻るまでの秒数を数えましょう。もし3秒以上かかった場合は、脱水症の疑いがあります。
3.ツルゴール反応
手の甲の皮膚を指でつまみ、パッと離した後に、つまんだ跡が消えるまで3秒以上かかった場合は、水分量が不足している状態です。脱水症を起こしている可能性があります。
脱水の予防方法
脱水を予防するためには、こまめな水分補給が大切です。喉が渇いているときは、すでに体内の水分が不足している状態にあります。そのため、喉が渇く前に水分補給するのがポイントです。
就寝前や起床時、運動中、入浴の前後などは、たとえ喉が渇いていなくても水分を摂取するようにしましょう。高齢者の場合、夜間のトイレを気にして、就寝前の水分補給を控える人は少なくありません。しかし就寝中も汗をかくため、就寝前にはコップ1杯の水を飲むとよいでしょう。
また、水分は食事から摂取することもできるので、3食しっかり食べることも脱水の予防につながります。
脱水になったときの治し方
脱水になったときは、水を飲んでも症状は改善されません。そもそも脱水は、水分と一緒にナトリウムやカリウムなどの電解質も失われている状態です。水だけを飲んでも体液濃度が薄まり、余分な水分が体外へと出されてしまうため、さらに体液不足に陥ります。脱水になったときは、経口補水液を飲むようにしましょう。
経口補水液とは、電解質を含んだ飲み物のことです。水分や電解質を効率よく吸収・補給できるため、脱水になってしまったときの対処法として効果的です。一般的なスポーツドリンクと比べると、糖分が少なく電解質の量が多い経口補水液は「マズイ」「美味しくない」と感じるものですが、水や電解質が失われている脱水状態では美味しく感じます。最近、市販の経口補水液は改良が加えられ、以前より飲みやすい味になりました。
日頃の正しい水分補給のポイント

日常の水分補給は水やお茶で構いません。こまめな水分摂取が重要なため、1回に飲む量はコップ1杯として、1日に1.2Lの水分を補給するようにしましょう。また水分を補給する際は、喉が渇く前に飲むことを意識し、入浴前後や就寝・起床時に飲む習慣をつけるのがポイントです。
運動や入浴などで汗をたくさんかいたときは、スポーツドリンクや経口補水液を飲むのがおすすめです。失った水分と電解質を効率よく補えます。ただし、飲み過ぎには注意が必要です。スポーツドリンクは糖分の過剰摂取による血糖値の上昇、経口補水液は電解質の過剰摂取による下痢を引き起こす恐れがあります。スポーツドリンクと経口補水液は、飲むタイミングを限定するとよいでしょう。
ちなみに、経口補水液はコンビニやドラッグストアで購入できますが、自宅で作ることもできます。作り方は簡単で、1Lの水に対し、塩2〜3gと砂糖20〜40gを混ぜるだけです。このとき、浄水器を活用すると、水道水の塩素をろ過し、美味しい水で作れます。脱水症に備えておけるのはもちろん、普段から美味しい水を飲みたい人にもおすすめです。
水分補給に適さない飲み物
水分補給の飲み物は何でもよいわけではありません。アルコールやカフェインを多量に含むものは利尿作用があるため、水分補給には適さない飲み物です。たとえたくさんの量を摂取しても、それ以上に体内の水分を排出し、脱水症に陥りやすくなります。ただし、普段から緑茶やコーヒーなどのカフェイン飲料を飲み慣れていて尿意をもよおさないような方は、それらを摂って水分摂取をしても良いでしょう。
日頃からこまめな水分補給を心がけましょう

水不足に陥ると体液が不足し、脱水症を引き起こす恐れがあります。体重に対する水分の減少率が高くなるほど重症化し、死に至ることもあるのです。脱水症を予防するためにも、日頃から小まめな水分補給が大切です。
とはいえ、水が美味しくないと、自発的な水分補給は難しいでしょう。ペットボトルで購入するとしても、自宅まで運ぶのに苦労します。そこでおすすめなのが、クリンスイの浄水器です。自宅の水道水がろ過されることで、塩素を除去するため美味しい水を楽しめます。クリンスイでは蛇口直結型やポット型、ビルトイン浄水器など、さまざまなタイプを用意しているため、希望に合わせて選べるところもポイントです。選び方がわからず迷ってしまう人は、水博士が教える浄水器の選び方を参考にしてみてください。
浄水器の選び方
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【監修者】 谷口英喜(たにぐちひでき)
社会福祉法人恩賜財団済生会横浜市東部病院患者支援センタ一長
1991年福島県立医科大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院麻酔科で勤務。その後、神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科教綬を経て、2016年より現職。脱水症・かくれ脱水の専門家としてテレビ・ラジオ番組等に多数出演。