大切なペットの健康に欠かせない飲料水。飼い主としては、できるだけ体に優しい水を飲ませてあげたいものの、たくさんの種類があって迷ってしまうことも多いですよね。なかには、せっかく用意した水をなかなか飲んでもらえず、困っている人もいるかもしれません。
今回は、犬や猫におすすめの水の種類、適正な摂取量、水を飲んでくれないときの対処法など、ペットの飲料水に関するさまざまな疑問について解説します。
犬や猫に水道水を与えても大丈夫?
水道水には消毒のために塩素が含まれているので、なんとなくペットに与えるのを躊躇している人もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、犬や猫に飲み水として水道水を与えても、健康に問題はありません。日本の水道水は、蛇口で検出される残留塩素の濃度が「1mg/L以下」になるよう調整されています。これはWHOが人体に影響の出るラインとして定める「5mg/L以下」を下回る値であるため、ペットの健康を害することはありません。
ペットに水を与える際、大切なのは「水の状態を衛生的に保つこと」「ミネラル成分の少ない軟水を選ぶこと」の2点です。ほこりや抜け毛が入った状態で長時間放置すると雑菌が繁殖しやすくなるので、水飲み器をこまめに交換するだけではなく、衛生的な水を選ぶことが重要です。また、ミネラル成分の多い硬水は尿路結石の原因になることがあるため、避けるようにし、軟水を与えるようにしましょう。
日本の水道水はこの2点をクリアしており、安心してペットに与えられる水といえます。
水道水を飲ませるメリット
水道水のメリットとして、第一に値段の安さが挙げられます。東京都の水道代金は1Lあたり0.24円程度(※)なので、100円程度で売られている500mlペットボトルと比べると、1000分の1程度のコストです。
※参照:東京都水道局「節水について」
https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/faq/qa-11.html
さらに、塩素が含まれているため雑菌の繁殖が抑えられ、塩素の含まれていない水よりも、長期間保存しやすいといわれています。
また、ペットに与える水は、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分が少ない軟水を選ぶべきです。日本の多くの地域では水道水は軟水であるため、この点でもペットの飲み水に向いています。
水道水を与えるときの注意点
先ほど、日本の水道水は軟水が多いと説明しましたが、沖縄全土や千葉県の木更津市、埼玉県の熊谷市など一部地域では硬水のところもあります。とくに、猫に硬水を与えると尿路結石のリスクを高めてしまうので、これらの地域で水道水を与えるのは避けた方が良いでしょう。
また、井戸水も注意が必要です。水質調査を受けており、飲料水にして問題ないと判明して入れば大丈夫ですが、管理されていない井戸水は病原体や化学物質に汚染されている可能性があります。井戸水を飲料水にする場合は、年1回以上の水質調査を行い、井戸周辺に野生動物などが近付けないよう管理しましょう。
水道水のほかに犬猫が飲んでも良い水の種類
水道水のほかには、どのような水が犬や猫の飲料に適しているのでしょうか。ペットに最適な水の種類を紹介します。
浄水器の水
水道水が安全な水だとはわかっていても、カルキ臭が気になる場合もあるでしょう。また、築年数の古い住宅だと、水道管や貯水槽の汚れが水に混じることもあり、そのまま飲ませるのを躊躇する人もいるかもしれません。
そのような場合は、浄水器を使うのがおすすめです。性能の良い浄水器であれば、水の汚れや不純物だけでなく、カルキ臭やカビ臭さなども除去してくれるため、ペットにも安心して与えられます。
犬や猫の好みもあるので、そのままの水道水と浄水を与え、選ばせてあげても良いでしょう。
ミネラルウォーター
軟水のミネラルウォーターであれば、基本的にはペットに与えて問題ありません。
ただし、ミネラル成分の多く含まれた硬水は避けましょう。前述の通り、硬水に含まれるマグネシウムやカルシウムは、尿路結石の原因となる物質です。とくに、海外製のミネラルウォーターや海洋深層水などは硬度の含有量が非常に高い製品もあるため、避けるようにしてください。
市販のミネラルウォーターには硬度が記載されています。硬度が「60mg/L未満」のものが軟水なので、確認してから与えると安心です。
心配であれば、動物用のミネラルウォーターを購入しても良いでしょう。
ウォーターサーバーの水
一般的なウォーターサーバーでは軟水を使用していることが多く、基本的にはウォーターサーバーの水をペットに与えて問題ありません。なかには硬度が高めの天然水を使用しているサーバーもあるため、水の種類を確認してから与えてください。
ただし、ウォーターサーバーを使う際はメンテナンスに注意が必要です。しっかり清掃しないと、サーバー内部や注ぎ口付近で雑菌が繁殖し、カビなどが発生する可能性があります。定期的に清掃するか、自動クリーニング機能のついたサーバーを選ぶと良いでしょう。
犬猫に飲ませてはいけない水分の種類
反対に、犬や猫に飲ませてはいけない水はどのような種類があるのでしょうか。気を付けるべき水の種類について解説します。
ミネラル成分が多い水
カルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分を過剰摂取すると、尿路結石のリスクが高まります。とくに、猫は尿路結石になりやすく、症状が悪化すると命に関わる場合もあるのです。
市販されているミネラルウォーターのなかには、ミネラル成分の含有量が高いものもあります。「軟水」と表示されているものなら問題ないので、必ず表記を確認してからペットに与えるようにしましょう。
カフェイン飲料やアルコール飲料
カフェインやアルコール飲料を犬や猫が口にすると、中毒症状を起こす場合があります。とくに、カフェインは、コーヒーだけでなく緑茶や紅茶、ココア、人用の栄養ドリンクなど意外な飲料にも含まれているので、注意が必要です。
意識的に与えなくても、お茶の出がらしを食べてしまったり、こぼれたアルコール飲料を舐めてしまったりなど、誤飲・誤食する可能性もあります。ごく少量であれば問題ありませんが、食欲不振や嘔吐、ぐったりしているなどの中毒症状があれば、すぐに獣医師の診察を受けましょう。
炭酸ドリンクや炭酸水
摂取する量によっては炭酸ガスが胃に溜まり、猫の場合は胃拡張や胃捻転の原因になることがあります。また、加糖や硬水の炭酸ドリンクは、糖やミネラルの過剰摂取を引き起こしてしまう可能性があるので注意しましょう。
犬猫が飲む水の適量と水分不足のチェック方法
水は犬や猫にとって健康に欠かせない存在であり、毎日適性量を摂らないと健康への影響が懸念されます。1日に必要な水分摂取量の平均は、次のとおりです。
<1日の平均的な水分摂取量>
- 犬:体重1kgにつき50ml程度
- 猫:体重1kgに対して30~50ml程度
ただし、猫は基本的にあまり水分を摂取しないので、上記の量を毎日摂取していなくても、すぐ健康に影響が出るようなことはありません。とはいえ、平均より大幅に摂取量が少ない場合、脱水症状や尿路結石、腎不全などのリスクが高まります。毎日の水分摂取量をチェックし、水不足になっていないか注意してください。
犬は水を飲む際に水面より下に舌を入れて飲みますが、猫は水面に接する程度しか舌をつけないため、舌で水をすくいあげる量は1回でたった0.14ml程度です。水の容器からお水を飲む行動をしているから大丈夫と思わず、水分摂取量は測ってチェックすることをおすすめします。
水分不足のチェック方法
水分量をチェックするには、水飲み器に水を補給する際に水の量を測っておき、どのくらい減っているか確認すると良いでしょう。また、鼻や肉球、歯茎の乾き具合をチェックして、普段より乾いているようであれば要注意です。ほかにも、皮膚をつまんでみて、なかなか元に戻らない場合も脱水が疑われます。これはツルゴールテストと呼ばれ、背中や首などたるみの多いの皮膚を上に引き上げてひねり、手を離したときに皮膚が元に戻るまで2秒以上かかる場合は脱水であると分かります。
犬猫が水をあまり飲まないと起こる可能性のある病気
犬が進んで水を飲んでくれない場合、なんらかの病気やケガが原因の可能性があります。骨折や関節炎など、目で見てもわからない外傷が隠れており、痛みで水飲み場まで移動できない場合もあるのです。ほかにも、吐き気や胃痛などの体調不良、環境の変化や水飲み場が落ち着かない場所にあるなどのストレスから、水を飲まなくなることも考えられます。
また、シニアの犬は白内障により視力の低下が見られると水飲み場が分からなくなることもあります。その場合は飼い主が定期的にお水を与えてあげましょう。
体内の水分量が大幅に減ってしまうと、脱水症状や腎不全、便秘といった病気の原因になるので、注意深く観察することが大切です。
猫の場合でも、平均よりあまりにも水を飲む量が少ないと、肝臓や腎臓に負担がかかってしまいます。尿路結石や尿路閉塞、膀胱炎、腎不全など、発見が遅れると命に関わる病気に繋がるかもしれません。
尿路結石や膀胱炎はしっかりと水分を摂り、十分な量の排尿があることが重要です。また、病院で定期的に健康診断を受けて、異常を早期発見できるようにしましょう。
なかなか水を飲まない犬猫に飲ませる方法
水を飲ませる重要性はわかっていても、犬や猫が用意した水をなかなか飲んでくれないケースもあるでしょう。そのような場合は、以下の方法を試してみてください。
カルキを抜いてから与える
水道水は塩素が使われているため、独特のカルキ臭がすることがあります。地域や住宅設備によってはカルキ臭が強く出てしまうことがあり、匂いに敏感な犬や猫は、嫌がって飲まない場合があるかもしれません。
カルキ臭は、水道水を沸騰させたり、冷蔵庫で冷やしたりすると軽減できます。ただし、一度沸騰させて塩素を抜いた水は雑菌が繁殖しやすい状態なので、いつもよりこまめに水飲み器の水を交換するよう注意してください。
好みの温度にしてあげる
夏の猛暑日にぬるめの水を出したり、冬場に冷えた水を出したりすると、嫌がって飲まない場合もあります。人と同様に、暑いときは冷たい水、寒いときは温かい水を出してあげると、喜んでくれるかもしれません。また、なかには特定の温度を好むペットもいるので、複数の温度を試してみると良いでしょう。
とはいえ、あまりに冷たい水を飲ませすぎると、下痢や軟便の原因になる可能性があります。基本的には常温が最も身体に負担をかけないので、調整しながら与えるようにしてください。
飲みやすい水飲み器にする
水を入れる容器にこだわりがあるペットもいます。ステンレスや陶器、ガラス、プラスチック製など、複数の素材を試してみると良いかもしれません。その際、プラスティックやゴムでできた容器は場合によっては犬猫に接触性アレルギーを誘発することがあるので注意が必要です。口の周りが赤くなる、痒がる場合はこれらの素材でできたものではない容器をおすすめします。
また、水飲み器がペットに合っておらず、飲みづらい可能性も考えられます。容器を台の上に置いて高さを合わせたり、滑り止めを付けて動かないようにしたりなど、工夫してみましょう。猫の場合は、ヒゲが容器に当たるのが嫌いな子もいるので、飲み口の広いウォーターボールを試してみるのも一つの手です。
ほかにも、流水なら飲んでくれる猫もいます。容器に溜めた水を嫌がり、水道水から直接水を飲もうとする場合は、水が湧き出す電動タイプの水飲み器がおすすめです。
多頭飼いしている家庭では、ペットそれぞれによって好みの容器が異なることも。複数の容器を用意し、各自が安心して水を飲める環境を整えてあげると良いでしょう。
置き場所に工夫する
水飲み器の置き場所を変えるだけでも、効果があるかもしれません。
犬の場合、落ち着いて水が飲めるハウスの中と、飼い主と一緒に過ごすリビングなどの一角に置くのがおすすめです。飼い主の目につきやすい場所に水があると、水の量や汚れにも気が付きやすく、こまめな補給や交換につながります。
一方、猫の場合には、猫が安心できる高い場所や、リビングから離れた静かな場所に置くのがおすすめです。人通りが多く騒がしい場所だと水を飲まないケースがあり、とくにトイレと近いことを嫌います。お気に入りのキャットタワーの上や廊下の端、洗面所の側など、猫が水を飲みたいときにすぐ飲めるよう、複数の場所に置いてみましょう。
ウェットフードを与える
どうしても水を飲むのが苦手な場合は、ウェットフードを試してみるのも選択肢の一つです。通常のドライフードよりも水分量が多いため、毎日の食事から自然に水分を摂れます。
また、ドライフードに水やチキンの煮汁などを加えてふやかす方法も有効です。
犬猫が水を飲みすぎるときの原因と対処方法
水分不足は心配ですが、犬や猫があまりにも大量に水を飲む場合も、なんらかの病気が隠れているかもしれません。
犬の場合、水分摂取量が異常に増えているときは、腎臓病やクッシング症候群、糖尿病、子宮蓄膿症、上皮小体機能亢進症などといった病気が疑われます。これらの病気によって水を飲むようになるのではなく、尿がたくさん出るせいで水分が不足し、結果として水分摂取量が多くなっている状態です。このような「多飲多尿」の状態になっている場合は、犬の尿を採取して動物病院を受診するようにしてください。
猫の場合、体重1kg当たり50ml以上の水を飲んでいると「多飲」に該当し、原因としては、腎臓病や糖尿病、甲状腺機能亢進症などが考えられます。あまりに水の減りが早いようであれば、毎日の水分量をチェックして、病院を受診すると良いでしょう。
また、水を飲み過ぎると下痢を引き起こす可能性もあります。下痢が続くと、結果として脱水症状につながる場合もあるので、適量が摂れるよう管理してあげると安心です。
犬や猫にとっての美味しい水を、クリンスイで与えてあげましょう
犬や猫に水を飲ませる際は、ミネラル成分の少ない軟水を与え、水飲み器をこまめに清掃して衛生的な環境を保つことが大切です。また、水の温度や容器、水飲み場の環境などにもペットそれぞれの好みがあります。あまり水を飲んでくれないときは、温度調整したり別の容器を試したり、ペットの好みを探ってみると良いでしょう。
犬や猫の飲み水としては水道水が最適ですが、なかにはカルキ臭を嫌がって飲まない場合も。そのようなときは、浄水器を使うのがおすすめです。
クリンスイの浄水器なら、独自の「中空糸膜フィルター」が、水道水に含まれる雑菌や微粒子をしっかり除去。カルキ臭も低減してくれるため、ペットを飼っている家庭にも愛用されています。
簡単に取り付けられる蛇口直結型から、冷蔵庫に収納できるポット型、お湯や浄水を切り替えられるビルトイン型など、多様な製品タイプからライフスタイルに合ったものを選べる点もポイントです。
なかには、ミネラル成分を除去して軟水化してくれるポット型製品もあり、ペットに与える水としておすすめです。こちらの記事で詳しく紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。
関連記事
関連商品
【監修者】 石井香絵
AVSAB(アメリカ獣医行動学会)会員、ロイヤルグルーミング学院しつけ・行動学講師。
ペットの行動コンサルテーション Heart Healing for Pets 代表。犬猫の問題行動の治療を専門とし臨床に携わる傍ら、セミナー・執筆活動・メディアなど幅広く活躍。行動治療にホリスティックケア(メディカルハーブ、フラワーレメディ、レイキ、アニマルコミュニケーションなど)を取り入れ動物たちに優しい治療を行っている。