2023.02.13

日本酒の美味しい飲み方!
仕込み水・和らぎ水について知ろう

日本酒は、ワインなどの洋酒や焼酎などの蒸留酒にはない、特別な美味しさと味わい方を楽しめるお酒です。近年は、日本を超えて世界へと広がりつつあります。世界的にも評価される日本酒の美味しさには、水が大きくかかわっていることをご存じでしょうか。

この記事では、日本酒の味や香りを支える水について解説します。仕込み水や和らぎ水と日本酒の関係がわかれば、これまで飲んできたお酒をもっと美味しく楽しめるでしょう。



日本酒にとって「水」はとても大切

日本酒は米と米こうじ、そして水という非常にシンプルな原料で造られるお酒です。このなかでも、水は原料としてラベルへ記載する義務はありません。

しかし、実は日本酒成分の約8割を水が占めています。そのため日本酒の仕上がりは、どのような水を使うかによって左右されるといっても過言ではありません。

たとえば、日本酒の製造工程では、まず洗米で水が使われます。日本酒を醸造するのに必要な酵母の集まり「酒母(しゅぼ)」造りにも水が欠かせません。出来上がった日本酒(原酒)には、アルコール度数を調整するために水を加える作業も必要です。

このように日本酒造りには水の出番が多く、水そのものが大きな影響力を持っているのです。

仕込み水とは

日本酒造りにおける仕込み水とは、日本酒の成分の一部となる水をいいます。仕込み水は、蒸米や酒母(しゅぼ)造りなどの仕込みの段階で必要です。洗米用水や米を蒸す前に浸水するための浸漬用水、出来上がった日本酒(原酒)に加える割水用水とは別で分類されています。

仕込み水は、出来上がった日本酒の質を決める重要な原料です。余計な成分の入っていない清らかな水を使うと、雑味のないクリアな味わいの日本酒が生まれます。さまざまな成分のなかでも、鉄分は日本酒の製造に向いていません。鉄が多く含まれる水を仕込み水に使うと、米の豊かな香りや日本酒本来の風味が失われてしまいます。


仕込み水の硬度による日本酒の違いと特徴

水に含まれる鉄などの成分以外にも、日本酒の味を左右する要素があります。それが水の硬度です。水は含有するカルシウムとマグネシウムの量によって、硬度が定められています。世界保健機関(WHO)の基準によると、硬度120mg/ℓ~180mg/ℓ未満は硬水、60mg/ℓ~120mg/ℓ未満は中硬水、60mg/ℓ未満は軟水です。

軟水と硬水どちらが日本酒に向いているという訳ではなく、仕込み水に使うことで、それぞれ異なる味わいの日本酒を造れます。

軟水:まろやかな口当たりの日本酒

日本の水は、ほとんどが硬度成分が少ない軟水です。軟水を仕込み水に使うと、まろやかで優しく、口当たりのよい日本酒ができあがります。これは、時間をかけてゆっくりと発酵が進むためです。完全に発酵せずに残存する糖分も多く含まれるため、軟水仕込みの日本酒には酸味が少なく、甘口のものも多くあります。

軟水の仕込み水といえば、京都市伏見区の伏水(ふしみず)が有名です。カルシウムやカリウムをバランスよく含んでおり、まろやかな日本酒の仕込み水として使い続けられています。

硬水:キレのある日本酒

軟水に比べて、硬度成分が豊富に含まれる水が硬水です。硬水を仕込み水に使うと、キリッとしたキレのある辛口の日本酒ができあがります。これは、硬水に含まれるミネラルが酵母の栄養となり、その働きを助けるためです。軟水での仕込みよりも短時間で発酵が進むため、存在感があり濃厚で辛口の日本酒となるのです。

日本では珍しい硬水の仕込み水といえば、兵庫県西宮市の宮水(みやみず)が有名です。京都の伏水と同じく鉄分は少ないですが、酵母をサポートするカルシウムやカリウム、リンなどのミネラルを豊富に含んでいます。


日本酒は「和らぎ水」と一緒に飲む

日本酒の美味しさを余すことなく堪能するために、家庭でも取り入れられる水があります。それが、日本酒を気持ちよく楽しむに当たり、なくてはならない存在である「和らぎ水(やわらぎみず)」です。

和らぎ水とは?

和らぎ水とは、日本酒と一緒に飲む水のことです。ウイスキーやテキーラなど度の強いお酒を飲むとき、チェイサーを用意する方もいるでしょう。和らぎ水はこのチェイサーと同じ役割を担っています。 和らぎ水の効果は、口の中に残っている味を一旦リセットできることです。一度、舌の感覚をクリアにすることで、日本酒の持つ繊細な風味を味わい続けられます。美味しく日本酒を味わう方法として、日本酒造組合中央会も和らぎ水を推奨しています。


和らぎ水を飲むメリット

日本酒を飲むときに和らぎ水を取り入れるメリットは、日本酒の味わいが引き立つことだけではありません。実は身体にうれしい効果もあるのです。ここで、和らぎ水を飲むメリットを3つ解説します。

飲み過ぎ・二日酔いを防ぐ

和らぎ水には悪酔いや二日酔いを防いだり、飲み過ぎを防止したりする効果があります。そもそも日本酒は、ウイスキーや焼酎などの蒸留酒ほどではないものの、アルコール度数が15度から20度程度はあるお酒です。

実際に日本酒で悪酔いしたり、二日酔いになったりした経験がある方もいるでしょう。そのような方は、日本酒と一緒に和らぎ水を飲むようにしてください。体内に入るアルコールが薄まるため、酔うスピードが緩やかになるのを感じられるはずです。その結果、悪酔いや二日酔いを予防できます。

アルコールの吸収が緩やかになると、自分が今どの程度酔っているのかがわかりやすくなる点もポイントです。水を飲む行動が、お酒を飲み続けることを防ぎ、結果的に飲み過ぎ防止につながります。

脱水症状を防ぐ

「アルコールは水分補給にならない」と聞いたことがある方もいるでしょう。アルコールには利尿作用があるため、飲んだ分量以上に身体から水分が出ていきます。

もちろん日本酒も例外ではありません。どれだけ飲んでも体内の水分は補えないため、飲酒中は軽度の脱水症状になっていることもあります。脱水症状は二日酔いの原因の一つともいわれているため、和らぎ水を取り入れて上手く回避しましょう。

日本酒を飲む合間に和らぎ水を飲むと、身体への水分補給ができます。これをこまめにおこなうことで、飲酒による脱水症状を避けられます。

日本酒や料理の美味しさが引き立つ

日本酒は製品によって異なる、繊細な味わいをしています。甘味や辛味、酸味などの味だけでなく、米由来の柔らかい香りやフルーツのような香りなど、風味の違いは多種多様です。これこそ日本酒の魅力なのではないでしょうか。

日本酒の風味は、飲むときの日本酒の温度や合わせる料理によっても変わるほど繊細です。この繊細な味わいをしっかり楽しむには、お酒や食事の合間に和らぎ水を飲むようにしてください。

和らぎ水はお口直しになります。口の中に残っている味をリセットできるため、次に飲む一杯はもちろん、料理そのものの味わいまできちんとわかるようになります。和らぎ水は、身体に優しいだけでなく、美味しくお酒と食事を楽しむためにも、重要なものです。


和らぎ水の選び方

日本酒と食事を美味しくいただくには、和らぎ水の選び方も大切です。基本的に硬水ではなく、軟水を選ぶとよいでしょう。

日本の水はほとんどが軟水です。軟水を使う酒造は多く、仕込み水と同じ軟水を和らぎ水にすることで、お酒の味を損なわずに楽しめるといわれています。近年は、仕込み水を和らぎ水として出してくれる居酒屋もありますよ。

ミネラルが多い硬水は、水そのものの味に個性があるため、人によっては飲みづらさを感じてしまうかもしれません。繊細なお酒の味を邪魔してしまうこともあるため、和らぎ水には不向きな場合もあります。


和らぎ水の飲み方のポイント

日本酒の味わいを最大限に引き出し、身体にも優しい効果のある和らぎ水は、どのように飲むとよいのでしょうか。ここからは、和らぎ水の飲み方のポイントを解説します。

日本酒と交互に、同じ量を飲む

日本酒を少し飲んだら、同じ量の和らぎ水を口にするようにしましょう

前述の通り、日本酒を飲み過ぎると利尿作用が働き、飲むよりも多くの水分が失われてしまいます。ある程度お酒を飲んでから一気に水を飲んでも、水分はすぐに体内に吸収される訳ではありません。脱水を防ぐために、こまめに水を飲むようにしましょう。

日本酒と交互に和らぎ水を飲むようにすれば、飲み過ぎ防止にもつながります。結果的に二日酔いにもなりにくくなるでしょう。

常温で飲む

和らぎ水はキンキンに冷やしたものではなく、常温で飲むようにしてください。冷やした和らぎ水だと、内臓の負担となる可能性があります。とくに冷酒を飲んでいるときは、既に内臓が冷えて血行不良になっているかもしれません。アルコールだけでなく温度による身体の負担を和らげるためにも、常温の和らぎ水がおすすめです。


日本酒のいろいろな飲み方

最後に、さまざまな日本酒の飲み方を紹介します。水が美味しさのカギとなる水割りとお燗、冷酒はどのように味わうとよいのでしょうか。ぜひ好みの飲み方を見つけてくださいね。

水割り(水で薄める)

日本酒は水で割っても美味しくいただけます。黄金比率はお酒:水=8:2です。割るために使う水にもこだわってみてください。基本は軟水がおすすめです。

ただし軟水と硬水によって、日本酒の味の個性は変化します。一度飲み比べてみて、好みや日本酒に合わせて使い分けてもよいでしょう。

お燗

お燗とは温めた日本酒のことです。日本酒は冷たく感じる温度から、熱いと感じる温度まで幅広く楽しめる、世界的にも珍しいお酒です。日本酒は温度が5度変わるだけで、味や香りが変化するともいわれています。

冷やした日本酒はスッキリとした爽やかな味わい、温めた日本酒は豊かな香りや甘味、まろやかな味わいが特徴です。温め方によって変化する表情も楽しんでみてください。

お燗は温度によって名前が付けられています。燗を付ける際の参考にしてください。

  • 飛びきり燗(55℃以上):徳利を素手で持てないほど熱い温度です。強い香りやシャープな味を楽しめます。
  • 上燗(約45℃):軽く湯気が立つ温度です。香りや味が強まり、奥行きを感じられます。
  • ぬる燗(約40℃):徳利を素手で持っても熱くない程度の温度です。日本酒の甘みとコクが引き立ちます。
  • 人肌燗(約35℃):人の体温と同程度の、ほのかな温かさを感じる温度です。米本来の旨味や麹の香りがよくわかります。
  • 日向燗(約30℃):常温よりもやや高い温度です。味と香りがほんのり立ち、なめらかな口当たりになります。

冷や

冷や(冷や酒)とは、常温で飲む日本酒のことです。20℃前後の日本酒が冷やと呼ばれます。冷蔵庫のない時代、日本酒はお燗か常温で飲むのが一般的でした。そのため、お燗に対して、常温が「冷や」と呼ばれるようになったのです。

日本酒を冷やにすると、味のバランスがよく感じられます。日本酒が持つ本来の味わいを感じやすくなるため、まずは冷やを味わってから、お燗や冷酒で楽しむのもよいでしょう。外気の温度に影響される飲み方でもあるため、夏はまろやかな口当たりを、冬はシャープな飲み口を楽しめます。

冷酒

冷やが常温の日本酒であるのに対し、冷酒は冷やした日本酒のことを指します。温度は5~10℃程度が目安です。90年代のバブル期に大吟醸ブームが起こったことで、冷酒という飲み方も広まったといわれています。

日本酒は一般的に、冷やすと喉ごしがクリアになって飲みやすくなります。日本酒を初めて飲む方や強いお酒が苦手な方は、温度が低い冷酒ほど飲みやすく感じられるかもしれません。

冷酒には温度によって粋な呼び名も付いています。

  • 雪冷え(約5℃)
  • 花冷え(約10℃)
  • 涼冷え(約15℃)

日本酒ごとに、もっとも美味しい温度は異なります。ぜひさまざまな温度で飲み比べてみてください。


日本酒と水は切っても切れない関係

美味しい日本酒と良質な水は、切っても切れない関係にあります。質のよい水は、仕込みを始めとした製造過程に欠かせません。

居酒屋や家庭で日本酒を楽しむ際は、割り水や和らぎ水を用意しておくと日本酒の味わいが広がります。ぜひ自宅でも美味しい水を飲めるようにしましょう。

日本酒にも合う和らぎ水、自宅でいつでも飲めるようにするには浄水器が便利です。クリンスイの浄水器は、微粒子や雑菌、赤さびなどを取り除く、中空糸膜フィルターを搭載しています。

水道水に含まれる不要な成分は除去し、美味しい水に欠かせないミネラルは残すことが可能です。卓上に置いておけるポット型や水道直結型、ビルトイン型など、用途に合わせて選べますよ。

クリンスイのポット型浄水器には、日本の水道水をさらに軟水にする浄水器(JP407-D)もあります。ぜひ自宅の水にこだわって、日本酒を楽しんでください。


関連商品

【監修者】 トータル飲料コンサルタント 友田晶子

ソムリエ・日本酒きき酒師歴30年以上のキャリアを持つ、トータル飲料コンサルタント。日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)理事、SSI INTERNATIONAL国際きき酒師副会長として、のべ12万人のきき酒師やワインソムリエを輩出し、お酒でおもてなしができる人材を育成する。「日本料飲ビジネス研究会」会長として、全国観光地の宿泊施設・飲食店向けの飲料部門売上向上支援を行い地域活性に尽力。一般社団法人日本のSAKEとWINEを愛する女性の会(通称:SAKE女の会)代表理事。日本産酒を愛する人を増やし、日本産酒メーカー応援とPRを国内外にて行う。近著の『ビジネスエリートが知っている 教養としての日本酒』(あさ出版)がAmazonランキングで1位を獲得。

JOURNAL

クリンスイの読みもの

記事一覧