2020.06.10

【潤いのレシピ】 ⿃⽻周作(昼⾷編)
「280点!」と叫びたくなる ハマグリのボンゴレ

Photo / Norio Kidera
Text / Reiko Kakimoto
Edit / Shunpei Narita

有名シェフの素材への向き合い⽅を聞きながら、⽇々の⾷から暮らしに潤いを与えるようなレシピを朝・昼・晩と三⾷ご提案いただく連載企画[潤いのレシピ]。レストラン[sio]オーナーシェフの⿃⽻周作さんは、朝⾷編で、「ホタテと春野菜のグリーンサラダ」の作り⽅を教えてくれました。

昼⾷編は、旬のハマグリを使った「ハマグリのボンゴレ」です。材料と作り⽅は下部にまとめています。

「ハマグリはここのしか使わない」と⿃⽻さんが全幅の信頼を寄せるのが、『⼀⼭』のハマグリ。

「⽇本で⼀番だと思っています(と、ここでちょうど宅急便でハマグリが到着)。⾙を洗っていない状態でも、ほら、⾙の表⾯にまったくぬめりがないんです。普通、ハマグリをより分けると1 箱に数粒は状態が悪くて匂いが出てしまっているものがあるのですが、⼀⼭さんのはいつも完ぺき。出荷前の⼿当てがいい証拠です」


以前は産地や⽣産者を前⾯に出したメニュー作りを意識していたこともあるといいますが、いまは「⾷材にフォーカスするよりも、調理技術やコンセプトのほうを⼤切にしている」と⿃⽻さん。その考えがよく表れているのが、1 万3500 円で限定販売(五⽉中旬の取材時)をしている「贅沢弁当」です。

「⾷べ⼿がコロナ期に、飲⾷店に求める1 万円の価値って⾼級⾷材にはないな、と感じています。僕ら[sio]のチームは弁当という枠組み=制限の中で、コース料理を表現しています。⽜⾁の上にウニをのせているのも、贅沢な⾷材を⼊れるという発想ではなくて、すき焼き⾵味の⽜⾁に、溶き卵の役割としていてウニをのせる、そういう考えです。お弁当箱を厳選して、それを⾵呂敷で包み、ぴったり合う紙袋を作って。僕らとしては、贅沢弁当は『⽬先のキャッシュ(⾚字)を補填するツール』ではなくて、お弁当という形のクリエイティブ、芸術だと思っているんです」

社会が抱える問題に「おいしい」で答えていく。それが⿃⽻さん流の料理⼈としての矜持だといいます。⾷材に頼りすぎると、社会解決の⼿法も、クリエイティブの幅も狭まってしまうというのが、いまの時点で⿃⽻さんが感じていることなのだそう。
その前提をもって、なお「これだけは」という⾷材はいくつかあります、と⿃⽻さん。その⼀つが『⼀⼭』のハマグリ。そのほかには和歌⼭『⼭利』のしらす。そして『セドリック・カサノヴァ』のオリーブオイル。

「これだけは替えがきかない⾷材。僕の料理には⽋かせません。」

そうした⾷材の味を引き出すのが⽔。今回使った「クリンスイCP013」の魅⼒。「もちろん⽔そのものもおいしいんですが、⾷材の味を引き出す⼒が、僕にとって⼀番の魅⼒ですね」と⿃⽻さん。さっそく、ハマグリのボンゴレを作っていただきましょう。

ところで、ボンゴレは⽩ワインを使って⾙を蒸し焼きする印象がありませんか?

「レシピを⾒ると、⾙を⽩ワイン蒸しして…って書いてあることがよくありますよね。でも⽩ワインの酸味を⾶ばしながら加熱するって、実は結構難しいんです。⽩ワインのアルコール分が残ってしまったり、煮詰まった酸味が出ちゃったりすることがあるので、あまりおすすめしないです。むしろ⽔が正解。アルカリ⽔で⾷材のうまみをしっかり引き出しましょう」

ハマグリの旨みを引き出すためにも、アルカリ⽔が好適

ボンゴレの味を存分に味わってほしいから、材料はミニマム。それだけに1つ1つの⼿順が味わいの完成度に⼤きく影響します。

たとえばニンニクのみじん切り。

にんにくはいつもより細かく刻むことを意識して。⼤きめの⽋⽚に⽕が通り過ぎた際に、焦げ臭くなるのも防げます

「かなり細かいですよね。お店でもニンニクのアッシェ(みじん切り)だけは僕がやっているんです。細かく均⼀に切らないと、⽕⼊れした際にムラがでて、芯まで加熱されていないかけらが出てしまう。そうすると⾷べたときに⼝にいつまでもニンニクの強い⾹りが残ってしまうんです」

パスタを茹でます。ハマグリのエキスがたっぷり詰まったスープを最後に吸わせることも考慮し、硬めに茹でること

パスタはアルカリ⽔を使⽤。1%濃度の塩⽔でゆでます。「アルカリ⽔でゆでることで、パスタの⾷感がもちもちします。よく茹で湯をパスタソースに使いますが、ボンゴレに関しては、⾙に塩分があるので使いません」

ニンニクにしっかり⽕が通ったら、ハマグリと⽔を⼊れて蓋をし、蒸し焼きします。

「ハマグリにちゃんと⽕が⼊ると、殻から⾝がするっと外れます。殻は全部外しましょう」
硬めにゆでたパスタを、ハマグリのエキスがたっぷり滲み出たスープにあわせます
ハマグリのスープにパスタをあわせ、刻んだパセリとオイルを三周。⽔分を⾶ばしながらしっかりかき混ぜ乳化させます

さあ、⾒てください。この仕上がり! ⿃⽻さん、いかがですが?

ソースとパスタがしっかりと絡むように、平⽫でなく深さがあるタイプの⽫に盛り付けるのもポイント

「今⽇のハマグリは⿅島産です。うまっそう! (⼀⼝⾷べて)…うまっ!!!! ここ最近⾷べたパスタの中で⼀番うまい!! …280点!!」と絶叫。

「ハマグリが⽢やかで、余韻が半端ない。もう⼀⼝、もう⼀⼝って誘う味です。セドリック・カサノヴァのオリーブオイルがどんぴしゃで合うなあ。…これ、丼で⾷べてもいいっすか?(笑)」

⾷べ終わった後、しみじみと「素材と⽔が決め⼿だよなあ」とつぶやいた⿃⽻さん。春の海をぎゅっと濃縮した味わいのパスタ、ぜひ『⼀⼭』のハマグリでお試しください。

材料(1 人分)

  • スパゲッティ(1.9mm) 120g
  • ハマグリ(殻付き) 550g(今回は80g/粒を使用)
  • ニンニク(みじん切り) 1 かけ分
  • オリーブオイル 大さじ2
  • 水(アルカリ水が好ましい)
  • 塩(湯量の1%)
  • イタリアンパセリ(刻む) 少々

作り方

  1. スパゲッティをゆでる鍋に水をたっぷり入れて沸かし、1%濃度になるように塩を入れる。通常のゆで時間よりも1 分早めに上げる。
  2. ハマグリを蒸し煮する。1.と同じタイミングで、フライパンにオリーブオイルとニンニクを入れ、強火にかける。ニンニクから泡が出てきたら弱火にし、ハマグリと水100ml を加える。
  3. 蓋をして強火にし、蒸す。貝が開いて、身にしっかり火が通ったら、火を消して殻を外す(火が入っていたらするっと取れる)。身はフライパンに戻す。
  4. パスタとハマグリを合わせる。ゆであがったスパゲッティを2.のフライパンに入れ、強火にかける。パスタにハマグリのスープを吸わせながら混ぜる。煮詰まったらイタリアンパセリを加え、オリーブオイルを3 回し(分量外)し、スープを乳化させる。

今回、⿃⽻さんが使⽤したのは、美味しい⽔のブランド『Cleansui』のアルカルポットシリーズ「クリンスイ CP013」。電源を使わずに、浄⽔されたきれいなアルカリ⽔をつくれます。除菌も可能なフィルターで微細な雑菌や⾚サビ、鉛までしっかり除去。プロダクトデザイナー柴⽥⽂江⽒によるポットのデザインは、美しい曲線が印象的。キッチンにも⾷卓にもすっきりとなじむデザインです。(※現在は販売終了しております。)
https://cleansui.com/products/cp013
※カートリッジは引き続き販売中です。浄水用のポットにもご使用いただけます。

とばしゅうさく

1978 年⽣まれ、埼⽟県出⾝。J リーグの練習⽣、⼩学校の教員を経て、32 歳で料
理⼈へと転⾝した異⾊のシェフ。神楽坂[DIRITTO]、⻘⼭[Florilege]、恵⽐
寿[Aria di Tacubo]といった名店で修⾏を積み、2016 年3 ⽉より代々⽊上原
[Gris]のシェフに就任。その後、同店のオーナーシェフとなり、2018 年7 ⽉よ
り[sio]としてリニューアルオープン、『ミシュランガイド東京2020』で⼀つ星
獲得。2019 年10 ⽉丸の内ブリックスクエア内にアラカルトで楽しめる[o/sio]
をオープン。12 ⽉東急プラザ渋⾕内にオープンした純洋⾷とスイーツ[パーラー
⼤箸]を監修。(各店の営業状況は各公式ウェブサイトをご確認ください)

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